10月22日は「アニメの日」。これは1958年10月22日に、日本初の長編カラーアニメーション『白蛇伝』が公開されたことにちなみ、日本のアニメの魅力を世界に発信するため2017年に制定された記念日だ。
日本のアニメの魅力はさまざまあるが、キャラクターに声を吹き込む「声優」の演技に惹きつけられた経験を持つ人は多いはず。絵を見ただけで名セリフがその声優の声で再生されるようなキャラもいるが、今ではおなじみとなったキメセリフが実は声優たちのアドリブから生まれていたというケースも少なくない。
今回は、「アニメの日」にちなみ、『北斗の拳』や『ドラゴンボール』といった懐かしアニメにおける声優たちのアドリブエピソードを振り返りたい。
■オリジナル断末魔が有名な『北斗の拳』
今年、『週刊少年ジャンプ』での連載開始から40周年を迎えたことで新アニメの制作も発表された『北斗の拳』。1984年から放送されたテレビアニメ『北斗の拳』は、ベテラン声優たちのアドリブが数多く生まれた作品でもあった。
声優を語る上で欠かせないのが、アドリブ王・千葉繁さんの演技。千葉さんが担当していたのはジョーカー・ザコ・次週予告まで幅広いが、千葉さんは特にザコに対する思い入れが強かった。
2013年の30周年の際に『北斗の拳』公式サイトで行われたインタビューでは、「ザコにもそれぞれの人生がある。声優は声で名もなき男たちの最後の代弁者となる気持ちで演じていた」と発言している。そのザコへの思いが詰まっていたのが、各キャラが最期に遺すあまりにもユニークな断末魔の叫びの数々。
『林修の今でしょ!講座特別編 声優はスゴいんだ!!今、声優でしょ!3時間SP』に出演した際は、「ちぃーばぁー!」と叫んだときはディレクターに「番組を使って売名行為はやめてください」とNGを出されてしまったという、千葉さんならではの遊び心あるエピソードを明かしていた。
さらに、ケンシロウ役の神谷明さんも「あたたたた」の後に「終わった!」というアドリブを「ほわたぁっ!」の叫び声にひそかに込めていたそうで、フジテレビ系のバラエティ番組『トリビアの泉』などで、「喉への負担が大きく遊びがないと辛かったので、“本当に仕事疲れたな これで終わりだの意味を込めて言った」と明かしている。
生誕40周年記念を記念して作られるという『北斗の拳』。放送日や声優などは現段階では発表されていないが、ケンシロウの声、そしてザコの断末魔の数々が楽しみなファンは多いに違いない。
■大山のぶ代さんのアドリブが後世まで引き継がれた『ドラえもん』
1973年から50年以上に渡って放送されている国民的アニメ『ドラえもん』で、1979年から2005年の間、26年に渡ってドラえもんの声優を務めた大山のぶ代さん。大山さんのユニークな声は、ドラえもんのキャラクターとがっちりハマり幅広い世代の視聴者を魅了した。
そんな大山さんのドラえもんを思い浮かべるとき「こんにちは、ぼくドラえもんです」という声が頭に聞こえてくるが、実はこのセリフは大山さんのアドリブで生まれたものだったそう。過去のインタビューで明かされた話によると、台本に書かれたのび太とドラえもんの初対面のセリフは「やあ、オマエがのび太か」だったのだとか。だが大山さんはこれを見て、子守り用ロボットにスラングはインプットされていないだろうと判断し、柔らかい口調に変更。アドリブではあったが、藤子・F・不二雄さんに後日感想を聞いたころ「第1話を見ましたが、ドラえもんってああいう声をしていたんですね」という快い反応があったそうで、「役者冥利につきる」と振り返っていた。
たしかにアニメのドラえもんに「オマエ」は似合わないように感じる。普段から子どもたちに対し、悪い言葉を教えたくないと考えていた大山さんならではのエピソードだろう。