■悪の女幹部になったワガママなお姫さまがヒーローに恋をして?…ゾンネット

 最後に紹介する女幹部は『激走戦隊カーレンジャー』(1996年)からゾンネットを紹介する。彼女は宇宙暴走族ボーゾックに所属する幹部だが、その正体はファンベル星の第一王女であるバニティーミラー・ファンベルト。実はゾンネットはお姫様暮らしが嫌になったために家出をし、ボーゾックに転がり込んだワガママな不良娘なのである。さらに、可愛い容姿の彼女はボーゾックの総長ガイナモに惚れられ、本人もそれを熟知したうえで彼を顎で使う傍若無人っぷり。彼女の妹ラジエッタ・ファンベルトはカーレンジャーに憧れた挙げ句に自称ホワイトレーサーを名乗るなど、姉妹揃ってやりたい放題だ。

 そんなゾンネットだが、敵対するカーレンジャーのレッドレーサーに一目ぼれをしてからは一途な姿を見せるようになる。とはいえ、彼女が好きなのはあくまでレッドレーサーであり、変身前の陣内恭介が同一人物と気づかず「猿顔の一般市民」と見下していた。本編終盤でレッドレーサーの正体に気付いたゾンネットはショックを受けるも、自分を救おうとする恭介の姿に心を打たれ両想いになる。そのため、本編での最終回やその後のエピソードなどにより、2人の行く末を想像したファンも多いだろう。

 ゾンネットを演じたのは七瀬理香さんで、劇中歌『夢見るゾンネット』などの歌唱も担当。ちなみにゾンネットの登場以降『電磁戦隊メガレンジャー』(1997年)のシボレナや人気の高かった『星獣戦隊ギンガマン』(1998年)の操舵士シェリンダなど、スーパー戦隊シリーズには生身のセクシーな女幹部が続けて登場している。

 最近の女幹部では、桃月なしこさんが演じた2020年放送の『魔進戦隊キラメイジャー』のヨドンナ様があげられるが、彼女は東映特撮ファンクラブにて2021年8、9月にスピンオフ作品『ヨドンナ』と『ヨドンナ2』が配信されるほどの人気であった。

 ヨドンナを含めて悲劇や悲恋、また孤独を抱えながらも戦う女幹部の姿はどの時代も強く美しく、それゆえファンのなかにはヒーローより彼女たちの動向に視線が奪われてしまうのかもしれない。

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