■忘れさせるも思い出させるも自由自在…「頭顳(ずせつ)」
『北斗の拳』ではおもに相手を無力化させ、肉体の内側から破壊するために活用されることが多い“秘孔”だが、一方でちょっとした“記憶操作”にもこの秘孔が役立つ場面が登場した。
物語序盤、ケンシロウはKING軍の兵士の一人に向かって、“頭顳(ずせつ)”なる秘孔を突き、彼の記憶を操った。秘孔の場所は左右のこめかみにあり、ここを突くと一時的に脳の動きを麻痺させ、前後の記憶を消去することができるのだ。
この秘孔は登場するごとに少しずつ効果が異なっており、対象の記憶を消すこともできれば、記憶を引き出すためにも活用されている。使用時の強弱などで効果が変わるようで、作品によっては“百裂拳”とあわせて使われ、ほかの秘孔同様に相手を爆死させていた。
ちなみに小説版では、失われた記憶を呼び覚ますためにこの秘孔が用いられており、記憶全般の操作にも使えるようだ。
また、同じ漢字で読み方の違う“頭顳(ずしょう)”という秘孔も登場しており、こちらは突いた相手が自らの意思とは関係なく、相手から尋ねられた物のある方向を指し示してしまう効果があるのだが、やはり爆発させ始末するというバイオレンスな効果がある。
人間誰しも、忘れたい嫌な記憶や思い出せない貴重な記憶というものがあるだろう。なかなか操作することが難しい記憶も、この秘孔を活用すれば自由自在にコントロールすることができるのである。無論、やりすぎると記憶の“改ざん”もできてしまうため、悪用されてしまってはたまったものではないかもしれない。
いずれにせよ、頭部を突くだけで脳の奥底に眠る“記憶”までも自在に操ってみせる、なんとも摩訶不思議な秘孔である。
『北斗の拳』における“経絡秘孔”といえば、相手を爆破させ破壊させる攻撃的なものばかりかと思いきや、破壊以外にもさまざまな効果をもたらす秘孔があることに驚いてしまう。
使い方次第では我々の日常生活を便利にしてくれそうなものばかりで、なんだか少し“北斗神拳”の伝承者が羨ましく思えてしまう。