『北斗の拳』(原作:武論尊氏、作画:原哲夫氏)といえば、主人公・ケンシロウが一子相伝の暗殺拳・北斗神拳を武器に活躍する名作バトル漫画だ。作中では人体にさまざまな影響を及ぼす“経絡秘孔”が登場するが、実は対象を破壊するのみならず、日常生活にも活用できそうな便利なものが存在する。攻撃だけにとどまらない、多種多様な効果を持つ“秘孔”の数々について見ていこう。
■心穏やかになりたいときにはコレ! 「定神(ていしん)」
『北斗の拳』は核によって荒廃した世紀末の世界が舞台となっているのだが、無法地帯となった土地では暴虐非道な連中が跋扈し、悲劇が巻き起こされた。
とくに悲劇の対象となるのは、力を持たない子どもたちだ。物語序盤に登場した戦闘集団「GOLAN」は、自分たちの子孫を残すための器として子どもたちをさらい、逆らう大人たちを返り討ちにするという暴挙に出た。
作中に登場した少女・リマは目の前で実の父親が首を落とされるシーンを目撃してしまい、そのあまりにも凄惨な光景に心が耐えられなくなってしまう。ケンシロウによって救出された彼女だが、父親の死にざまを前に冷静になることなどできず、錯乱する一方だった。
そんなとき、ケンシロウが使ったのが、鼻の下に位置する“定神”と呼ばれる秘孔だ。これは肉体をいっさい傷つけない秘孔で、対象を強制的に気絶させることで精神状態を落ち着かせることができるというもの。リマのように錯乱した人間に用いることで、冷静な状態にさせる効果があるのだ。
やはり人間、常に冷静沈着とはいかないもので、突然のトラブルや予想外の事態に取り乱してしまうときもあるだろう。そんなとき、いったん冷静になってストレスフリーな生活を送るうえでは、なにかと活用できそうな秘孔である。
ちなみにこの技、精神を落ち着けるという効果に着目され『北斗の拳5 天魔流星伝 哀・絶章』など一部のゲーム作品では、味方の混乱状態を治す技としても登場している。気絶してしまうことの是非は置いておいて、悩みの多い現代人にはどこか便利に見えてしまう経絡秘孔だ。
■これ一つあれば医者いらず? 「安騫孔(あんばくこう)」
『北斗の拳』ではさまざまな武器、拳法を操る強敵たちが立ちはだかるが、ときに彼らと戦う場所や地形も勝敗を左右する重要な要素となっていた。
物語終盤、屈指の強敵であるカイオウとの戦いのなかで、ケンシロウは大地から噴出する「硫摩黄煙」なる特殊な煙に苦しめられることとなる。これはいわゆる“火山ガス”で、充満すると空間の酸素濃度を薄めてしまうことはもちろん、血中に溶け込むことでも肉体にも影響を及ぼし、正しい呼吸ができなくなってしまう。
いかにケンシロウが超人的な身体能力を持っているとはいえ、人間として必要不可欠な“呼吸”を断たれてしまっては、満足に戦うことはできない。地の利を最大限に活用しケンシロウを追い詰めるカイオウだったが、一方でこれを打ち破った経絡秘孔が“安騫孔(あんばくこう)”と呼ばれるものだった。
位置は左胸の三点(アニメだと逆側)で、ここを突くことによって肉体の“毒”への抵抗力を急激に高め、劣悪な環境にも適応できるようになる。ケンシロウは自身の秘孔を突くことで「硫摩黄煙」を克服し、見事に形勢逆転してみせた。
肉体を突くだけで“毒”への抵抗力を上げられるというのだから、健康に気を遣う人間にとっては非常に有用な秘孔だろう。病気やウイルスに対しても秘孔を突くだけで対抗できるならば、まさに医者いらずである。
ちなみにこの秘孔もその特徴から『北斗の拳』のゲーム作品に活用されており、作中ではキャラクターの攻撃力といったステータスを向上させる効果に変更されていた。
さまざまな病が蔓延している現代だからこそ、是非とも活用したいと思ってしまう経絡秘孔だ。