『動物のお医者さん』に『娚の一生』にも…魅力的な“オジサマ”が出てくる少女漫画たちの画像
花とゆめコミックス『動物のお医者さん』第1巻(白泉社)

 少女漫画の主人公といえば、昔から“聡明で美しい女の子”といったイメージがある。しかし年々、少女漫画のメインキャストは多様化しており、なかには魅力的な“オジサマ”のキャラクターもしばしば見かけるようになった。いわゆる“主人公の女の子”とは性別も年齢も違うからこそ魅力がある彼ら。今回はとくに印象深い“オジサマ”が出てくる人気少女漫画を紹介したい。

■元祖オジサマ人気キャラ!?『動物のお医者さん』 

『動物のお医者さん』は1987年から1993年に『花とゆめ』(白泉社)で連載された佐々木倫子さんの人気漫画だ。モデルとなった北海道大学獣医学部は連載中に倍率が跳ねあがり、本作に登場するシベリアン・ハスキーのブームが起きるなど、社会現象をも巻き起こした作品である。

 そんな本作の“名物オジサマ”といえば、漆原教授だ。漆原信は獣医学部の教授であり、付属動物病院の院長も務めているとあって威厳が高そうだが、実はアフリカンアートを収集しているハチャメチャな人物。大学内で動物を逃がして一大騒動を巻き起こしたり、物を壊したり。学生の服装は偉そうに注意するものの、自身は頭にアフリカンファンを被って登場するなど、やりたい放題だ。

 ただ、そんな頑固そうなオジサマが「アイスクリームちょうだい」と真顔で言うなど、なんとも言えぬ可愛さを併せ持つキャラクターでもある。

 佐々木さんの描く人物はみなシリアスで美しいのだが、その描画と裏腹にシュールなセリフや行動が本当にユニークで魅力的だ。漆原教授は“こんなオジサマが身近にいたら大変だけど楽しそう”と思わせてくれる貴重な存在だろう。

■ 若かりし教授の姿に胸キュン!!『天才柳沢教授の生活』

 山下和美さんによる『天才柳沢教授の生活』は、1988年より『モーニング』(講談社)に連載された作品だ。

 主人公・柳沢良則は、学ぶことと規律を守ることを重んじる大学教授。道路は必ず右端を歩き、横断歩道以外では道を渡らないなどこだわりがある。

 最初のころはギャグの要素が強かった本作だが、巻数を重ねるごとにヒューマンドラマの要素が高まっていった。現在、柳沢教授はかなり目の細い“糸目”のオジサマとして描かれているが、若いころは超絶イケメンで、彼が信念を曲げずにまっすぐ生きてきたことがわかるエピソードが多数登場している。

 なかでも印象深かったのが、柳沢教授が大学生だったころの戦後エピソードだ。親を失い、固く心を閉ざした“かい巻の少年”や、未亡人の貝塚町子、GHQのアレン中佐など、多種多様な人々との心の交流が丁寧に描かれている。本エピソードは“その後”の展開も描かれており、その内容に心打たれた人も多いだろう。

 筆者は若いころに本作を何気なく読みはじめたのだが、徐々に展開されるヒューマンドラマにすっかり夢中になった。堅物なオジサマだと思っていた柳沢教授の若かりしころに胸キュンし、年老いても時折見せる鋭い眼光に心を奪われてしまう読者も少なくないはずだ。

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