■元凶はあの女性だった!? 『北斗の拳 イチゴ味』
次は、公認パロディギャグ漫画『北斗の拳 イチゴ味』(原案:武論尊氏・原哲夫氏、シナリオ:河田雄志氏、作画:行徒妹氏、協力:行徒氏)を見てみよう。本作は、原哲夫氏の画風を再現した作画とキレ味鋭いギャグのギャップが評判の作品だ。
原作を容赦なくパロディしている本作では、問題の核シェルターを第122話でネタにしている。
原作同様、例の女性から「どうつめてもふたりまでです!!」と告げられるトキたち。諦められない3人は肩車したり、そっと入ろうとしたり、あの手この手でシェルターに入ろうとする。
だが、何をやっても“見えない力”になぜか弾き飛ばされてしまう3人。失敗するたびに例の女性が「どうつめてもふたりまでです!!」とくり返す天丼の流れが面白い。
進退窮まったトキはついに北斗神拳を解禁して強行突破を狙うのだが、その瞬間、例の女性が華麗な静水の動きでトキを吹き飛ばす。今までの見えない力も、すべては女性の仕業だったのだ! そして、とうとう運命を受け入れたトキは、外からシェルターを閉めるのであった。原作通りに……。
このエピソードでは、トキのセリフ「夫人が何者か目的もわからぬが…」が印象的だった。何がなんでもシェルターに2人しか入れようとしない女性、いったい何者だったのだろう。
■トキ役の人もつい笑っちゃう…『北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝』
続いては、スピンオフコメディ漫画『北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝』(原案:武論尊氏・原哲夫氏、漫画:倉尾宏氏)から。「北斗の拳が実写ドラマだったら!!?」をテーマに、ドラマ「北斗の拳」の撮影現場でくり広げられるドタバタを描いた作品だ。
本作の魅力は、原作のツッコミどころをドラマ撮影という切り口で理由付けする独自路線にある。例の核シェルターを扱ったのは、第40話「衝撃のシェルター回!!」。撮影見学に訪れた幼稚園児たちにエキストラをお願いした結果、セットのシェルターが子どもでいっぱいになるトラブルが描かれるエピソードだ。
園児で溢れかえったセット内には2人しか入れず、役者が演技をするスペースもない。本来は一度シェルターに入ったトキが、シェルターの故障でやむを得ず外から扉を閉める脚本なのだが、これでは不可能だ。
監督・原口勝夫は苦肉の策として、トキが外から扉を閉めるだけで話が成立するようシーンを改変。これこそ、ドラマ版「あと2人しか入れない核シェルター」の誕生秘話である。
不測の事態とはいえ、不自然すぎるシナリオに役者たちは困惑。作中でトキを演じる大石博典にいたっては、扉を閉める瞬間につい笑ってしまうのであった。
ちなみに本エピソードでは子どもを抱っこしてスペースを確保しようとするも、彼らのワガママで失敗する一幕が描かれている。多くの読者が思う疑問に応えるサービス精神は、『世紀末ドラマ撮影伝』の面白さの根源だと思う。
読者を圧倒する熱量と勢いの前には、少しの矛盾はむしろ愛嬌となる。今回取り上げた核シェルターも、名作『北斗の拳』を彩るネタとしてファンから愛されてきたといえるだろう。
『北斗の拳』は40周年にあたり、新作アニメ化が決定している。武論尊氏は「今回は原作を大事に描くことを基本にしているという」とコメントしており、忠実な原作再現が期待できそうだ。
はたして令和の『北斗の拳』アニメは核シェルターをどう描くのか。期待したいところだ。