2023年9月13日に40周年を迎えた『北斗の拳』(原作:武論尊氏、作画:原哲夫氏)。主人公・ケンシロウたちが見せる拳法アクションや、核戦争後の世紀末を舞台にした人間ドラマの数々は、いまも読者の心を掴み続けている。
そんな『北斗の拳』では、読者が思わずツッコミたくなる超展開が少なくない。とくに、トキが不治の病を患う原因となった「あと2人しか入れない核シェルター」はその筆頭だろう。あまりのシュールさと無茶すぎる展開は、アニメ版やスピンオフ作品にも影響を与えている。
今回は『北斗の拳』屈指の迷シーン(!?)、あと2人しか入れない核シェルターが後続作品でどう描かれたかを紹介しよう。
■「もっとやりようなかったの!?」原作の核シェルターはツッコミどころ満載
まずは、原作のシーンを振り返っておこう。核戦争が勃発した直後、ケンシロウは兄弟子のトキ、恋人のユリアとともに核シェルターへの避難を試みる。そこでケンシロウたちが見たのは、大勢の子どもとわずかな大人で満員のシェルターだった。
シェルター内の女性は「どうつめてもふたりまでです!!」とケンシロウたちに告げる。覚悟を決めたトキがケンシロウとユリアをシェルターに押し込み、自分は外から扉を閉じて死の灰を浴びる……という流れだ。
トキの自己犠牲が美しいエピソードだが、冷静に考えるとかなりおかしい。「子どもを抱っこすれば入れたんじゃない?」「よく見たら明らかに大人1人分のスペースがある」といった具合で、ツッコミだしたらキリがないのだ。
考察するとおかしな描写が目立つ『北斗の拳』だが、そのなかでもこのシーンは長年ファンの間で語られてきた不朽の迷シーンだ。こういう奇妙さも『北斗の拳』の味といえるだろう。
■辻褄を合わせようとした旧アニメ版や『銀の聖者 北斗の拳 トキ外伝』
原作のストーリーをなぞるアニメやスピンオフ作品では、核シェルターの場面を改変しているものが目立つ。
旧アニメ版では「シェルターの扉が故障しており、誰かが外で閉め続けるしかない」設定に変更されている。とはいえ、核戦争が起きたタイミングで故障するシェルターとは、なんとも間が悪い。
そして、トキが主人公のスピンオフ漫画『銀の聖者 北斗の拳 トキ外伝』(原案:武論尊氏・原哲夫氏、作画:ながてゆか氏)では、核シェルター直通のエレベーターが登場している。3人は重量オーバーでエレベーターが動かない、という理屈だ。
確かに重量オーバーならスペースは関係ない。個人的にはかなり説得力のある設定変更だと思う。
こうして見ると、どうにか整合性を取ろうとシェルターの設定を変えているように思える。当時のスタッフも「子どもがいっぱいで入れないのはおかしい」と考えたのかもしれない?