■三枚目だけどスポーツへの情熱は本物! 『H2』木根竜太郎

 あだち充さんといえば、数多くのスポーツ青春漫画を手掛けた漫画家だが、1992年より『週刊少年サンデー』(小学館)で連載した『H2』も、高校野球をテーマとした長編の名作少年漫画だ。

 主人公やヒロインの甘酸っぱい恋模様が描かれるのも本作の特徴だが、それでいてしっかりと“野球”の魅力も描いているのはあだちさんの手腕によるものだろう。

 そんな本作において、異なる競技から“野球”へと転身したキャラクターといえば、木根竜太郎だ。木根は入学当初からサッカー部で活躍しており、花形選手として注目され、女子生徒からの人気も高かった。しかし、女性にも金にもだらしない性格が露見すると、その評価は一変。すっかり“三枚目”として、周囲から扱われるようになってしまう。

 実はメインキャラクターの一人である橘英雄とは因縁があり、リトルリーグで活躍していた際、英雄に4番の座を奪われたことで野球から退き、サッカーへと転身したという過去を持っている。当時の恨みを晴らすため、木根は野球部にも入部し、掛け持ちをしながら選手の一人として活躍していくのだ。

 入部動機こそどこか不純なものがあった木根だが、それでもスポーツにかける思いは本物で、部活動に出ずとも自主練はきっちりとこなすといったストイックな一面も見せている。

 作中では事故に遭い欠場するというアクシデントもあったものの、努力によって再び選手として返り咲いてみせた。どこか人間臭い一面が目立つものの、スポーツに対する熱意をしっかりと芯に宿したキャラクターである。

 

 スポーツ漫画ではまったく別の競技選手が、ひょんなことからメインテーマとなる競技へと足を踏み入れるケースも少なくはない。かつての競技で身につけた身体能力を活用したり、主人公の活躍を後押ししたりと、その活躍方法が多種多様な点も興味深い。

  1. 1
  2. 2