■息子までも再起させるマラソンへの情熱…『マラソンマン』高木勝馬

 スポーツマンは常に己と戦い続けるストイックな姿勢を求められるが、なかでもそれが色濃く表れるのが“マラソン”ではないだろうか。

 1993年から『週刊少年マガジン』(講談社)で連載された井上正治氏の『マラソンマン』は、タイトルの通りマラソンを主軸にさまざまな人間模様を描いた作品だ。

 主人公・高木一馬が世界の舞台に立つまでを描く本作において、彼がマラソンにのめり込むきっかけとなったのが、父・高木勝馬の存在だ。

 勝馬は酒とギャンブルに溺れるどうしようもない父親だったが、かつては日本陸上長距離界で活躍した名選手の一人だった。長らく陸上の世界から離れ落ちぶれていたものの、息子・一馬の親権を巡って妻・美也子と争うこととなり、息子を守るために再びマラソン選手として再起。一馬を心の支えとしてメンタルの弱さを克服し、怒涛の勢いで数々の試合を勝ち進んでいくこととなる。

 奇跡的な復活を遂げ順調に実績を重ねていく勝馬は、オリンピックの前哨戦であるパリ世界選手権マラソンに出場。凄まじい実力で最後まで食らいつき、暫定2位というポジションまで辿り着いた。

 だが、ゴール寸前でトップを抜こうと前に出た瞬間、思いも寄らぬ悲劇が起こってしまう。勝馬は“急性心不全発作”を起こして転倒し、そのまま帰らぬ人となってしまうのだ。

 奇跡的な復活を遂げ、息子のために再び世界の舞台を目指した勝馬だったが、栄光をつかみ取る寸前、非情にも夢はその手からこぼれ落ちてしまった。

 勝馬の死は一馬にも大きな傷を残した。陸上の世界から目を背けていた一馬だが、ひょんな出来事から勝馬から受け継いだ“情熱”が燃え上がり、父と同じくマラソンで世界の舞台へと挑戦していくこととなる。

 熱い思いで自身を再起させただけでなく、死してなお息子に思いを継承した、なんとも印象的な父親キャラだ。

 ときに厳格に、ときに優しく……家族としてだけでなく、同じスポーツ選手としても大きくたくましい背中を見せ、子どもたちを導いた父親キャラたち。彼らの意思は死してなお、子どもたちに受け継がれ、新たな世代の支えとなって生き続けている。

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