■『彼岸島』のツッコミどころを拾ってくれたパロディ作品『彼、岸島』
『彼、岸島』(作画:佐世保太郎さん、 原案:松本光司さん)は、松本光司さんによる吸血鬼との戦いを描いた『彼岸島』のパロディ漫画である。
主人公・岸島は、吸血鬼から仲間だと勘違いされ行動をともにする。本当は人間なのに逃げ出せず、吸血鬼たちの姿や行動にツッコミを入れながら展開していくストーリーだ。
本家の『彼岸島』はかなり血なまぐさいストーリーだが、主人公の武器がなぜかいつも丸太だったり、普通死ぬだろうというシーンでも生きていたりと、シリアスながらもかなりツッコミどころがある作品だ。
『彼、岸島』はそんなファンの声を拾ったかのようなツッコミが満載のギャグ漫画であり、本作へのオマージュに溢れている。彼岸島を少しでも知っている人なら読みやすい作品であり、ホラーのなかでも笑いが溢れている作品だ。
■あまりの激似作画に息をのむ…手塚プロダクションも公認『#こんなブラック・ジャックはイヤだ』
最後に、“漫画の神様”こと手塚治虫さんのパロディ作品を紹介したい。『#こんなブラック・ジャックはイヤだ』(著者:つのがいさん)は、手塚さんの『ブラック・ジャック』のパロディ漫画だ。
本作では主人公のブラック・ジャックをはじめ、助手のピノコ、ライバルでもあるドクター・キリコなども登場するが、本家にあるシリアスさがない。
たとえば、キリコがいきなり‘‘俺を忍者にしてくれ”とブラック・ジャックに相談したり、キャラクター全員がノリノリで踊ったり……。スマホも使いこなし、写真加工アプリやQRコードを使ったギャグなどは秀逸だ。
さらに驚くのが、原作の『ブラック・ジャック』と、かなり似たタッチの画だ。キャラクターは手塚さんが描く人物そのもので、周りの背景なども当時と変わらない手法で描かれており、昭和漫画の雰囲気を楽しめる。
しっかり表紙を見ないと、本当の手塚作品だと勘違いしてしまうかもしれない。そんなこともあってか、なんと手塚プロダクションも公認しているという、驚きのギャグ漫画だ。
一生懸命書いた漫画がパロディ化されるのを嫌がる作家もいるだろう。しかし今回紹介したほとんどのパロディ作品には、本家の原作者がかかわっていることに注目したい。その作品を愛しているからこそ、より面白く、本家では描けなかった展開に発展させているのだろう。
愛してやまない往年の少年・青年漫画。たまにはそのパロディ作品を読み、本家とは違った世界観を楽しんでみてはいかがだろうか。