圧巻の画力で恐怖感倍増!? 『りぼん』黄金期を支えた一条ゆかりの代表作『有閑倶楽部』のホラー回の画像
一条ゆかり『有閑倶楽部』を旅する(別冊太陽 太陽の地図帖)(平凡社)

『有閑倶楽部』は、『りぼん』(集英社)で1981年より連載された人気作品だ。累計売上部数はなんと約2700万部(2008年時点)で、『りぼん』黄金期を支えた一条ゆかり氏の代表作である。

 本作は超セレブ高校生の6人がさまざまな事件に巻き込まれ、事件を解決していくストーリーだ。ときには世界を股にかけ、知力や体力、そして、セレブ力を生かしながら難題に決着していく。

 しかし『有閑倶楽部』ではよくホラー系のストーリーも登場し、当時の“りぼんっ子”たちを震え上がらせた。緻密に練られたストーリーに一条さんの画力もあって恐怖感倍増のホラー回、ここではとくに恐ろしかったストーリーを3選紹介する。

■『有閑倶楽部』本格ホラー初登場‘‘エメラルドの帯留めエピソード”

『有閑倶楽部』で本格的なホラーが展開されたのが、コミックス3巻PART8に登場するこちらの話だ。

 夏休みに信州の別荘に来たメンバー一行、そこで金持ちの大山夫妻と出会う。大山夫人の着物には、見事なエメラルドの帯留めがあった。その日を境に別荘には老婆の霊が出現し、メンバーたちはさまざまな怪現象に巻き込まれていく。

 老婆に憑依された悠理、それを利用し謎を突き止めていく清四郎、大山夫妻の娘に愛された美童、老婆に扮装する野梨子など、ホラー回ながらもメンバーの活躍は相変わらず見事だ。

 しかし、井戸から老婆が飛び出てくるシーンは衝撃的で、当時小学生だった筆者は読んでいて鳥肌が立ったのを覚えている。当時の『りぼん』ではキラキラした恋愛ストーリーが多かったので、本格的なホラーが掲載されていたのも衝撃だった。

 ちなみにこの話をきっかけに、主役メンバーの悠理は霊に敏感な体質になり、今後のホラーエピソードでも大きく活躍していくこととなる。

■幽霊+大量の◯◯で恐怖は倍増!! 「幽霊なんかこわくないの巻」

 コミック7巻に掲載されている「幽霊なんかこわくないの巻」は、オカルト系に加え、最後にはインパクトのある展開が待っている。

 野梨子はひょんなことからクラスメイトの賀茂泉のフィアンセとなり、彼の危篤の父に会うため、メンバーたちとともに瀬戸内海にある彼の実家に向かう。古いお屋敷には、夜になると若い女のすすり泣く声、白い影、風呂場には恐ろしい女の霊が出る。しかしそれは、屋敷の土地を狙うヤクザたちの仕業であった。有閑倶楽部のメンバーがヤクザを退治し万事解決……のように見えたが、実は賀茂泉家には恐ろしい祟りがあった。

 賀茂泉家の過去の秘密を知ったメンバーたちは、その後、本当の霊と対峙していく。祟りの元凶でもある島の祠に向かう展開が衝撃的で、そこには何万匹もの蛇が待ち構えていた。

 一条氏の描く画は繊細で、大量の蛇の描写もリアリティに溢れており、正直、かなり気持ち悪い。恐ろしい女の怨霊+リアルな蛇の描写は、当時の少女漫画界に大きな衝撃を与えたであろう。トラウマ級の描写があった回だが、二転三転する展開に目が離せなかった。

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