■半世紀近く経っても色褪せない珠玉のSF少女漫画…『11人いる!』

 次に紹介する『11人いる!』は、1975年『別冊少女コミック』で連載された萩尾望都さんの中編作品。

 宇宙大学の最終試験に挑む10人の受験生たちが、宇宙船の中で「11人目」の存在に疑心暗鬼しながらもトラブルを乗り越えていく物語。翌年には物語のその後を描いた『続・11人いる!-東の地平・西の永遠-』が短期連載され、1977年に『NHK少年ドラマシリーズ』の第1作として実写ドラマが放送。1986年にはアニメ映画化もされている。

 本作は異人種(異星人)同士の疎通や性差など現在にも通じる問題も取り上げながら、閉鎖空間で「11人目」を推理するミステリー要素も楽しめた。

 萩尾さんは1969年にデビューし、吸血鬼の悲哀が美しい『ポーの一族』、母娘の葛藤と愛憎を描いた『イグアナの娘』など、さまざまなジャンルを手がけながら50年以上も活躍。1970年代後半から1980年代にかけて発表された『百億の昼と千億の夜』(原作は光瀬龍さん、週刊少年チャンピオン)や『スター・レッド』(週刊少女コミック)などのSF作品は、難解ながらものめり込むほど魅力的であった。

■新感覚のSF作品が多数登場!

 1980年前後になると、佐々木淳子さんが描く新感覚のSF作品が『週刊少女コミック』系列の誌面を彩るようになる。1980年から『コロネット』などで連載されていた『ブレーメン5』は、隔離されて育った少女ユズがキメラ青年タウロに救われ、仲間たちとともに安住の地を求め旅立つ物語。同時期にUFOや遺跡などオカルト要素も楽しめた『那由多』(1981年)、R-ドリームと呼ばれる夢世界での戦いを描いた『ダークグリーン』(1983年)など斬新なSF作品を世に送り出した佐々木さんだが、現在も自費出版などで続編が発表されている。

 他にも、1986年から『ぶ~け』で不定期連載されていた、日本神話を読み解くような面白さが味わえた水樹和佳(現:水樹和佳子)さんの『イティハーサ』、1988年から『LaLa』などで不定期連載されていた樹なつみさんのスタイリッシュな作画が魅力の『OZ(オズ)』、1981年から『りぼん』で連載されていた荻岩睦美さんのほんわかタッチで描かれた『小麦畑の三等星』など、当時の少女漫画はかなり挑戦的な作品が掲載されていたように思う。

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