社会現象起こした作品も! 『ぼく地球』『11人いる』『地球へ…』70~80年代のSF少女漫画たちの画像
小学館文庫『11人いる!』(小学館)
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 10月3日よりNHKで放送される、ドラマ『大奥 Season2』は、男女の立場が逆転した江戸時代の大奥を描くパラレルワールド物語。よしながふみさんによる原作漫画は少女漫画雑誌『MELODY』に連載され、2022年には「第42回日本SF大賞」を受賞しSFとしても高く評価された。

 このように、少女漫画には繊細な作画と斬新な設定が盛り込まれた良質なSF作品が存在し、特に1970年代から1980年代には意欲的かつ独創的な漫画が数多く生まれた。そこで今回は、当時の印象的なSF少女漫画をふり返りたい。

■前世ブームの火付け役?推理要素やドロドロ愛憎劇も楽しめた…『ぼくの地球を守って』

 1986年より『花とゆめ』で連載された日渡早紀さんの『ぼくの地球を守って』は、10代の少女を中心に社会現象を巻き起こした作品だ。2023年3月にはOVAアニメ30周年を記念してLIVEイベントが行われるなど、今なお根強い人気を誇る作品で、現在は『MELODY』にて続編『ぼくは地球と歌う -ぼく地球(タマ)次世代編II-』が連載されている。

 物語は1991年(※連載開始時の5年先)の東京を舞台に、月基地に駐在していた7人の異星人が地球人に転生し、互いの記憶をめぐり真実をみつける群像劇。月基地メンバーは名前の響きから「紫苑」や「木蓮」など地球の花と同じロマンチックな呼び方で、そのほとんどが癖のある美男美女ぞろい。また、煩雑な関係や愛憎が丁寧に描かれ、台詞の真意を読み取ることで作者が投げかけた謎解きなども楽しめた。

 本作は70年代のオカルトブームの流れを汲む作品で、一部の若年層ファンが「私は木蓮の生まれ変わり」「自分は紫苑の記憶がある」など現実と物語の境界が曖昧となり、前世を思い出すために危険行為を起こし、それが社会問題となってしまう。こうしたファンの動きを受け、作者である日渡さんがコミックス第8巻の柱コメントで、「『ぼくの地球を守って』というマンガは、初めから最後まで、間違いなくバリバリの日渡の頭の中だけで組み立てられているフィクションです」と声明を出す異例の事態となった。魅力的なキャラが多数登場した本作だけに、当時の読者は物語世界に没入してしまったのかもしれない。

■少女漫画の重鎮が社会に一石を投じたSF作品…『地球へ…』

 続いては、こちらもタイトルに「地球」が入った竹宮恵子さんの『地球(テラ)へ…』。

 1977年より『月刊マンガ少年』(朝日ソノラマ)で連載された本作は、女性漫画家の竹宮さんが描く美しくも悲しい作品だ。遠い未来を舞台に、超能力を持つ新人類ミュウが地球に戻ることを切望し過酷な戦いを続ける物語。作中では高度化した文明の中、管理社会や地球環境、差別、命、倫理観など、現在にも通じるさまざまな社会問題が描かれている。

 竹宮さんが描くSF作品には『ビッグコミックフォアレディ』や『プチフラワー』で連載された『私を月まで連れてって!』シリーズも名作のひとつだ。21世紀後半(近未来)のアメリカを舞台に、レトロ趣味の主人公ダン・マイルドと17歳年下のおませな超能力少女ニナ・フレキシブルとの凸凹な恋愛模様が描かれている。作中でたびたび引用されるノスタルジックなSF用語や懐古的な思想も魅力だが、実は記念すべき第1話「夢見るマーズポート」は1977年に発行された小松左京さん監修の文芸書『SFファンタジア 地上編』に掲載のSF漫画だった。

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