漫画を原作とするゲームは、いつの時代も大人気だ。今はSwitchやPS5やアプリゲームで遊べるが、80年代はそれがファミコンだった。漫画の登場キャラを操作して原作のストーリーを追体験したり、ゲームオリジナルのストーリーを楽しんだりと、その世界観を味わうという基本的な楽しみ方は変わらない。
そこで今回は、そのなかでもちょっと個性的だった漫画原作のファミコンソフトを紹介する。いったいどんな内容だったのか見ていこう。
■究極のメニューを探し求める『美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負』
まずは、1989年に新正工業(シンセイ)から発売されたファミコンソフト『美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負』だ。原作はもちろん、雁屋哲さん原作、花咲アキラさん作画によるグルメ漫画の金字塔『美味しんぼ』だ。
このゲームは、そのパッケージデザインに驚かされる。漫画原作のゲームらしく主人公の山岡士郎や海原雄山が大きく描かれているのだが、それらを傍らに置いて中心にあるのは、なんと「魚の塩焼き」。これはコミックの表紙デザインを踏襲しているのだろうが、焼き魚がパッケージ絵になっているのは、ゲーム史上最初で最後なのではないだろうか。
ゲーム自体は、山岡が"究極のメニュー"を探し求めるコマンド選択式アドベンチャーゲーム。タイトル通り3本のシナリオが用意されていて、いずれも料理に関してのトラブルが発生し、山岡が「本物の◯◯がどんなものか教えてやる!」という原作ファンには慣れ親しんだ展開ではじまる。
コマンドのなかから行動を選択しながら進んでいくのだが、そのコマンドのなかには、警官と戦闘したり、食材を叩いてダメにしたり、数々の動物モノマネを披露したりと、原作の漫画では山岡が到底しないような行動も……。しかも、選択を間違えると山岡が頭を抱え即ゲームオーバーと、当時のファミコンらしい豪快な作りとなっている。
また、山岡、海原はもちろん、栗田ゆう子、富井副部長、大原社主、京極万太郎、小料理屋岡星の主人など主要キャラが総登場するのは原作ファンとして嬉しいポイントだった。
■古き良き大阪下町を駆けまわる『じゃりン子チエ ばくだん娘の幸せさがし』
次に、1988年コナミ(現:コナミデジタルエンタテインメント)より発売されたファミコンソフト『じゃりン子チエ ばくだん娘の幸せさがし』を紹介する。原作は大阪下町を舞台にして描かれた名作、はるき悦巳さんの昭和人情コメディー漫画『じゃりン子チエ』だ。
ソフトを起動させると、オープニングから、このゲームはなかなか凝った作りになっていることに気づく。ホルモン屋から出てきた父親のテツ、それをチエが追い回す原作らしいドタバタ劇を、うまくファミコン的な表現で見せてくれる。
ゲーム自体は3つの章に分かれた下町アドベンチャーゲーム。チエが人助けに走り回ったり、小鉄がほかの猫たちと会話したり、テツがギャンブルをしたり、探偵になりきって捜査したり……と、原作の雰囲気が存分に味わえるのが魅力だ。
また、キャラ絵が吹き出しでしゃべる、場面によって縦長・横長表示が切り替わるなど、グラフィックがきちんと作られているのも、本作のポイントだろう。また、背景である大阪下町もしっかり描かれており、まるで原作漫画をめくってプレイしているような感覚を堪能できる。まさに、“良キャラゲー”だったと言えるだろう。