『鋼の錬金術師』松雪泰子も…漫画の実写化で「ギャップある演技見せた」女優たちの体当たりの役作りの画像
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 原作ファンの数が多ければ多いほど、役者の再現力の高さによって賛否が分かれがちな人気漫画の実写映画化や実写ドラマ化。オファーを受けた役者にとっても、どれだけキャラを忠実に表現できるかが課題となるが、今回はそんな漫画の実写化作品で、生活スタイルや体型を変えて役作りに挑んだ女優たちを紹介したい。

■清純派からアウトローへの新規開拓!『マイ・ブロークン・マリコ』の永野芽郁

 2009年に子役として映画デビューを果たした永野芽郁。その後連続ドラマ『半分、青い』をきっかけに人気が爆発、同作品でエランドール賞新人賞も受賞した。これまで天真爛漫で明るい役柄が多い彼女だったが、2022年に公開された映画でこれまでのイメージを一変させる。それが平庫ワカのコミックが原作の『マイ・ブロークン・マリコ』だ。

 自殺・虐待・友情といった繊細で重いテーマを描いた今作で、永野芽郁は、ブラック企業に勤める主人公・シイノトモヨを演じた。トモヨは、ヘビースモーカーでズバっとした物言いのやさぐれたクールな女性。それまでにない役柄を演じるにあたり、永野芽郁が取り入れたのが、ヘビースモーカーなトモヨに寄せるため、クランクインまでの数か月に渡って実際にニコチンなしのタバコを朝から晩まで吸ったこと。食後など喫煙者がタバコを吸うタイミングで同じように自分もタバコを吸い、とことん体に「喫煙」の仕草を叩き込んだのだという。

 ニコチンなしとはいえ、非喫煙者からするとこの行動は苦痛だろう。実際、映画の完成報告試写会でも「すっごくマズくて慣れるまでちょっと大変でした」といったコメントを残している。体を張った努力は功を奏し、劇中での喫煙シーンは自然体そのもの。それまでのイメージを覆す役作りが見事に成功した作品と言えるだろう。

■年齢の垣根を超えた『その女、ジルバ』の池脇千鶴

 2021年1月クールに放送されたドラマ『その女、ジルバ』(フジテレビ系)は、手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞した有間しのぶ氏による同名漫画を原作とした実写化作品。40歳独身、劣化の一途を辿り希望を失っていた笛吹新が、高齢女性のみが在籍するバー「OLDJACK&ROSE」でホステスとして働き、先輩ホステスとの出会いや、初代のママ「ジルバ」の半生に触れることで、ポジティブさや自分らしさを取り戻していくというストーリーだ。

 本作で、主人公の笛吹新と伝説のホステス・ジルバの2役を池脇千鶴が演じているが、今作で見せた外見の“おばさん”ぶりが放送すぐに大きな話題となった。

 それもそのはず、池脇千鶴は「くたびれた40歳独身女性」を演じるにあたり、役作りのためにクランクインの前から自分の顔や体に手をかけないという逆エイジングケアを実践していたのだという。女優の命ともいえる外見の美しさを捨て、目の下にクマを作ったり肌を垂れさせたりといった努力の姿勢は、まさに女優魂そのもの。

 2015年の映画『きみはいい子』でもプロデューサーからの要望で体重増加をして役に入るなど、ストイックな役作りをする池脇千鶴ならではの本気エピソードだ。

 彼女の凄いところは、ただ外見を劣化させるだけでは終わらないところにある。物語が進むにつれ目の下のクマも無くなり、不安げで自信なさげだった顔つきも若々しく自信に満ちた顔つきになっていくのだ。笛吹新を完璧に表現した池脇千鶴の演技力と役作りによって、原作の持つ前向きなメッセージがさらに際立った。

 現代社会を生きる女性たちにプラスの刺激を与える、実写化ドラマの成功作のひとつではないだろうか。

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