漫画やアニメではたびたび、兄弟姉妹の愛が描かれる。『鬼滅の刃』では、主人公の竈門炭治郎が妹の禰豆子を命がけで守る姿が健気で、日本のみならず世界中がその姿に感動した。もちろん、家族が助け合う姿は等しく美しいのだが、竈門兄妹のように兄が妹を思い守る姿は、同性の兄弟や姉妹のそれとは違い、少し切なさを含んでいるように感じてしまうのは筆者だけだろうか。
そこで今回は、漫画やアニメに登場した妹思いの泣かせる兄キャラを3人紹介する。命を懸けて妹を守ろうとする、頼もしくもちょっと切ない兄たちを見ていこう。
■妹は私の誇り『BLEACH』朽木白哉
まず、久保帯人氏の『BLEACH』から。TVアニメが約10年ぶりに復活し、現在は「千年血戦篇−訣別譚−」が大好評放送中である。そんな本作には、朽木白哉という妹・朽木ルキアを思う兄が登場する。
朽木白哉は、護廷十三隊六番隊隊長で「全死神の規範であるべき」という強い信念を持った四大貴族・朽木家の第二十八代目当主である。ルキアの実姉・緋真と結婚したがまもなく死別、緋真の遺言通りにルキアを朽木家に養子として迎え入れ、自らの妹としている。つまり、白哉とルキアは義理の兄妹ということになるが、白哉には実の兄妹以上にルキアを守りたいという強い思いがあるように感じる。
「尸魂界篇」では、そのルキアの極刑が決まってしまうが異論を唱えず、一見冷徹な義兄に見えたが、そのかたくなな態度には二度の掟破り(緋真との結婚とルキアの養子入り)が理由にあった。いつもクールフェイス過ぎる白哉だが、心の中ではかなりの葛藤があったようだ。
また「破面篇」アニメ第197話「白哉卍解、静かなる怒り」では、ゾマリ・ルルーによってとどめを刺されそうになったルキアのもとに現れる。ルキアを人質にして戦うゾマリに対し、お前を斬る理由として“死神であるから”ではなく「私の誇り(ルキア)に刃を向けたからだ」と告げ、冷静だが妹を思う強い怒りで勝利した。
■邪眼の力で陰から妹を見守る『幽☆遊☆白書』飛影
次に、冨樫義博氏の『幽☆遊☆白書』に登場する、邪眼を持った高名な魔界の盗賊・飛影を紹介する。霊界探偵として派遣されていた幽助と戦うことになり、その後、桑原や蔵馬とともにメインキャラの1人として活躍した。
飛影には双子の妹・雪菜がいる。2人は氷河の国の氷女一族に生まれた。氷女は、単為生殖で女子を産むのだが、飛影らの母は炎の妖気を持つ別の種族の男性と恋に落ちる。そうして雪菜と飛影のきょうだいは誕生したのだが、飛影だけは“男子は不吉な存在”とされ、生まれてまもなく捨てられてしまった。
氷河の国へ復讐を心に生き、邪眼の移植手術によって氷河の国を見つけることができた飛影。しかし、氷女一族を実際目の当たりにすると復讐心もなくなり、その後は自分が兄であると名乗り出ることもなく妹・雪菜を陰で見守り続ける立ち位置に。
印象的だったのが、アニメ第25話『燃えろ桑原!愛の底力』で、雪菜を捕え苦しめた垂金という男に激しい怒りを見せたシーンだ。魔界の者が人間を殺してしまうと重罪になるという厳しい掟があるにもかかわらず、飛影は雪菜に止められるまで垂金を殴り続けていた。
そして、そのときも自分が兄であると名乗ることはなく「幽助たちの仲間」とだけ答えていた。兄として名乗らない理由として、邪眼の手術の条件にしていたこともあるのだが、それ以上に自らの意志があるのだろう。作中、最後まで雪菜には兄であることを伝えていない。
ちなみに原作でのこのシーンは垂金を派手に一発殴っただけで「…殺しはせん 貴様のうす汚い命で 雪菜をよごしたくないからな」と、手を引いていた。いずれも雪菜を思う気持ちに溢れていたように思う。
そして、雪菜も名言こそしていないものの飛影が兄であると感じているようで、その兄妹の関係性が切ない。