■麦わらの一味のために自ら犠牲となった『ONE PIECE』ボン・クレー(ベンサム)

 最後に、尾田栄一郎氏による『ONE PIECE』から、ド派手な衣装とクセの強いオカマ口調が特徴的なボン・クレー(ベンサム)を紹介したい。

 ボン・クレーは触った相手に自在に変身できる「マネマネの実」の能力者で、アラバスタ編で初登場した際には麦わらの一味の敵として立ちはだかるも、その後の彼の人情味溢れる行動に心を打たれた読者は多いだろう。

 実はボン・クレーは現在までになんと3度も身を挺して人を守っている。

 1度目はアラバスタからルフィたちが脱出するとき。仲間のために命を張る麦わらの一味に感銘を受けたボン・クレーは、自分が囮になって海軍と対峙し皆を逃がす。「命を賭けて友達(ダチ)を迎えに行く友達(ダチ)を…見捨てておめェら 明日食うメシが美味ェかよ!!!」の名セリフは、涙なしでは読めない。

 2度目は扉絵に描かれたエピソードだ。海軍から脱獄したボン・クレーは、同じく逃走中のミス・バレンタインが処刑されそうになっていることを知り、単身処刑場に乗り込んでいく。ここでも捕まってしまうのだが、やはり義理人情に厚い一面が際立っている。

 3度目は、インペルダウンでのルフィ救出だ。刑務所内でルフィと再会したボン・クレーは共闘することになるも、マゼランに襲われ最初はその場から逃げ出してしまう。

 しかし、そこで踏みとどまるのがボン・クレー。マゼラン署長の毒により瀕死のルフィの前に現れ、自身もボロボロの状態ながら彼を守った。

 そして、ともに脱出を目指すも、“正義の門”を開けるためインペルダウンに1人残ることを密かに決意。マネマネの実の能力でマゼラン署長に扮し、ここでもルフィたちの脱出を見届ける。

 マゼラン署長から「残す言葉はあるか!!!」と聞かれ、「本望」の返答と最後に詠んだ俳句もまた、ボン・クレーの心の強さが引き立てられている。その後、すべてを知ったルフィたちは大号泣するのだが、読者の多くも仲間思いな彼の思いに胸が熱くなっただろう。

 

 今回紹介した3人のキャラクターは、みな迷うことなく自分よりも他者の命を優先する深い愛情の持ち主だ。彼らの命を張った行動に救われたことで、主人公をはじめその後大きな飛躍を遂げた登場人物も多い。

 人とのかかわりが希薄になりがちな現代社会において、見返りを求めずただ世のため人のために行動を起こした彼らの生きざまからは、多くの学びを得ることができるだろう。

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