本格医療漫画『K2』が今アツい!  爽快感のあるエピソードに独特のワードセンス…人気沸騰中の理由を探るの画像
イブニングコミックス『K2』第1巻(講談社)

 2004年から『イブニング』(講談社)で連載が開始された、本格医療漫画『K2』(作画:真船一雄氏、原案協力:中原とほる氏)。現在は『コミックDAYS』にて、隔週日曜日ペースでWEB連載を続けている。

 シリーズの累計発行部数は1500万部を突破するなど以前から人気だったが、今年2月から5月31日まで行われていた全話無料公開をきっかけにSNSを中心にさらに大ブレイク。現在も最新話が公開されるたびにX(旧:ツイッター)でトレンド入りするなど、熱心な読者が数多く定着している。

『K2』が、なぜネット上でここまで人気となったのか。今回は同作を愛読している筆者の独断と偏見を交えつつ魅力を考えてみたい。

■カッコ良すぎる主人公…神代一人の完璧っぷり

『K2』は、「K」と呼ばれる孤高のドクター・KAZUYAが活躍する『スーパードクターK』シリーズの続編にあたる。

 本作では、とある山村で無免許医を営んでいたもうひとりの「K」である、神代一人(かみしろかずと)が主人公として登場。先代の「K」同様、患者を治すために難病や怪我に立ち向かっていく物語だ。

 一人がどんな医者かを端的に表現すると「完璧超人」だ。小さな異変から病理を見抜く頭脳と観察眼や天才的なメスの技術もさることながら、「野獣の肉体」と称されるほど肉体も常人離れしている。第27話ではその肉体を活かし、崖から落下しかけた車をロープで引き上げる離れ業を実行していた。

 ちなみに、前作の主人公・KAZUYAもかなりの肉体派だった。「医者は体が資本」と聞くが、「K」のそれは面白いほど度を越している。

 また、一人が読者を惹きつけてやまないのは、彼が持つ医者としての高潔な精神にもあるだろう。病気や怪我に毅然と立ち向かい、患者のよりよい未来のために最善を尽くしていく。たとえば、心筋症の影響で足を切断するしかない少年にあえて“足を切らない処置”を選び、その後、心臓移植手術を行うことで完治させたりもしている(第4話、第5話)。

 彼が医療行為に臨むシーンは、正義のヒーローが巨悪と闘うようなカッコよさを感じるのは筆者だけではないだろう。

 ちなみに『K2』では、ほかにも魅力的な医者が数多く登場する。一人と同じ診療所で働く若手ドクター・富永やKAZUYAのクローン・黒須一也といったメインキャラはもちろん、1話限りのサブキャラも救命に真摯な医者ばかり。

 読むたびに「この人にかかりつけ医になってほしい……」と思うお医者さんが増えていく、そんな漫画である。

■「450話を5周する人も」爽やかな1話完結スタイルとリアルな医療描写の両立

 1988年から連載を開始した『スーパードクターK』から数えると、シリーズ連載期間は脅威の35年を迎えた本作。一見、続編の『K2』から読むのはハードルが高そうにも思えるが、実際は上記で紹介した全話無料公開の影響もあり、多くの新規読者が生まれている。

 作品の面白さは言うまでもないが、これはエピソードの多くが独立した“1話完結スタイル”の影響が大きいだろう。

 患者の登場から診断、治療までがおおよそ1、2話で完結するストーリーが大半を占める本作。病に苦しむ患者が一人に治療され、元気な体でリスタートする爽やかなエピソードがとても多い。医療という重いテーマなのだが、読むと晴れやかな気分になれるのだ。

 また、実在する症状や治療法を取り上げている点も見逃せないところだ。医師である原田知幸氏が監修に携わっており、その描写の重厚さとリアルさに「実際の病院でもこういうことがあるのかな?」と興味を抱くこともしばしばだ。

 基本ハッピーエンドの1話完結スタイルと本格的な医療描写。この2点が絶妙にマッチしている『K2』は、スラスラ読めるのに満足度が高い。新規読者も、その驚異的な読みやすさにハマってしまうわけだ。

 まとめ読みをしていると「もう1話だけ」を何度もくり返し、気づけば50話、100話、と読みふける人も少なくない。なかには約450話を5周、6周したと語る猛者もいるという。かくいう筆者もすでに3周ほどしているが、まだまだ読み足りない気がする……。

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