『超電子バイオマン』に『電子戦隊デンジマン』も…『スーパー戦隊シリーズ』で子どもながらに強烈すぎたエピソード3選の画像
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『スーパー戦隊』と言えば『秘密戦隊ゴレンジャー』からはじまり、シリーズ47作目となる『王様戦隊キングオージャー』が現在も放送されている大人気シリーズである。人気の秘密は、戦隊を通じて視聴者である子どもたちに勇気や友情、そして正義の大切さを伝え続けているところだろう。

 そんないつの時代も“僕らの『スーパー戦隊』”だが、ときには、らしからぬ内容で視聴者を困惑させてしまうこともある。そこで今回は、当時の子どもたちに強烈なインパクトをあたえた名(迷?)エピソードを3つ紹介していく。

■女性隊員がまさかの殉職…『超電子バイオマン』

 まずは、1984年放送シリーズ8作目『超電子バイオマン』から。
『超電子バイオマン』は地球征服をもくろむ新帝国ギアに、体内に「バイオ粒子」をもった5人の若者が立ち向かうというストーリーだ。

 本作では「戦隊」という語句をタイトルに入れなかったり、1話では退場しない怪人が現れたりと、シリーズ8作目ということでマンネリを避けるために、いろいろな試みがなされた意欲的な作品だった。また、今や定番になっている女性隊員2人というのメンバー構成も、この『バイオマン』がはじまりである。

 問題のエピソードは、第10話『さよならイエロー』。皮肉にも、その女性隊員が絡んでいるエピソードだ。長い「戦隊シリーズ」の歴史のなかで唯一、敵の攻撃によって女性隊員が殉職してしまうのだ。

 第10話というまだまだ前半戦のこの衝撃の展開には裏がある。実は、イエローフォー・小泉ミカ役の矢島由紀さんが7話から9話のアフレコをおこなう前に突然降板する流れとなり、撮影陣はイエローがいなくなるような台本を急遽作らざるを得なかったというのだ。

 撮影済みの映像を駆使したり、変身後は違う役者が声を入れていたり、変身したイエローフォーの姿のまま葬儀が行われたりと、今見てもかなり苦労しているのがうかがえる。

 絶対負けないはずのヒーローの途中退場という事態……。当時の子どもたちにとって、さぞかし強烈なインパクトだっただろう。

■ホラーエピソードの多い初期『電子戦隊デンジマン』

 次に紹介するのは、1980年放送のシリーズ4作目『電子戦隊デンジマン』から。

 地球総ヘドロ化を企てるベーダー一族に、デンジ星人の末裔である5人の若者が立ち向かうストーリーだ。本作は「◯◯戦隊」という呼称、変身アイテム、巨大ロボなど「スーパー戦隊」のベースを確立した作品でもある。

 その一方、土曜18時放送の子ども番組らしからぬホラー展開や演出が特徴でもあった。初期はとくにホラーエピソードが多く、第6話『悪魔分身の少女』では、継母関係があまりよくない一人の少女に怪物が憑依し、次々に怪事件を起こしていくというかなりサイコホラー的展開になっている。

 少女の自殺未遂という重たい描写だけでなく、怪物が憑依しているとはいえ継母にナイフを飛ばしたり、人が変わったようなすごみのある声で“今度私を怒らせると、もっとひどいことになる”などと言い放つ少女の姿はかなりショッキング。当時の子どもたちにとって、トラウマ級のエピソードとなったようだ。

■敵幹部が精神崩壊する&ドロドロ三角関係の刺殺エンドの『鳥人戦隊ジェットマン』

 最後に紹介するのは、1991年放送シリーズ15作目となる『鳥人戦隊ジェットマン』だ。

 次元戦団バイラムから、バードニックウェーブと呼ばれる人間を強化するエネルギーを浴びた5人の若者が世界を守るというストーリー。

 実はこの時「戦隊シリーズ」は視聴率不振が続いており、本作でシリーズ打ち切りという窮地に立たされていたという。あとがない製作陣は「子ども向け番組から大人も鑑賞に耐えうるもの」をコンセプトに、かなり大きな改革のもと、撮影を開始させた。

 人間ドラマを重視し、敵幹部の心理描写にも力を入れていた本作。なかでも、ファンのなかで語り継がれる問題回が第47話の「帝王トランザの栄光」だ。

 急激な成長により少年から大人の姿になった敵幹部・トランザ。自称“帝王”を名乗るほど強力な力を手に入れたため、最終的にはそれをよく思っていなかった別の敵幹部によって精神崩壊させられ、変わり果てた姿になってしまう。敵を通して人間の闇を見せるような、なかなかディープな展開だ。

 また、1991年という年は『東京ラブストーリー』や『101回目のプロポーズ』が放送される、いわゆる「トレンディドラマ」全盛期でもあった。

 その影響なのか、それまで「戦隊シリーズ」にはあまりなかった恋愛要素が『鳥人戦隊ジェットマン』ではふんだんに盛り込まれている。戦隊メンバーのブラックとイエローがホワイトへ、ホワイトはリーダーのレッドへ、そのレッドは敵幹部の元恋人へとドロドロした恋愛模様が描かれ、そして、たびたびその恋愛が原因でチーム崩壊寸前になっている。

 さらに、最終回となる第51話『はばたけ!鳥人よ』では、レッドとホワイトの結婚式へ向かう途中で、ブラックが逆上した一般人に刺されてしまうというトレンディドラマさながらの衝撃的な最終回となっている。当時の子どもたちは複雑な感情でこの最終回を見ていたことだろう。

 

 今回は、『スーパー戦隊シリーズ』で、子どもながらに強烈すぎた名エピソードを3つ紹介してきた。いずれの作品もシリーズ初期や転換期の作品で、いろいろな試みのなかで生まれたエピソードだったように思う。

 しかし、最近でも42作品目『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』がシリーズ初のダブル戦隊体制だったり、45作品目『機界戦隊ゼンカイジャー』では、人間1人とロボット4体でスタートしたりと、トラウマまではいかないまでも、今でも「スーパー戦隊」はいろいろと新しい試みをし続けている。今後もどんな新しい「スーパー戦隊」が誕生するか目が離せない。

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