『闘神伝』や『トバルNo.1』も…バーチャファイター&鉄拳ブームで生まれた90年代「ポリゴン格ゲー」の隠れた名作の画像
プレイステーションゲームソフト『闘神伝』(タカラトミー)

 90年代は『バーチャファイター』や『鉄拳』といった3D格闘ゲームが登場し、空前の「格ゲーブーム」が巻き起こった。しかし、これらの作品の影に隠れた名作格闘ゲームが、ほかにも数多く登場していたことをご存じだろうか。そこで90年代をおおいに盛り上げた、ポリゴン格ゲーの数々について見ていこう。

■簡単入力が格ゲー初心者にも嬉しかった『闘神伝』

 1995年にタカラ(現:タカラトミー)から発売された『闘神伝』は、PlayStation(以下、PS)のハード発売からわずか1カ月後に登場した3D格闘ゲームだ。

 3D格闘ゲームのキャラクターたちは、実際の格闘技をモチーフにしたリアルな技や動きで戦うのが特徴だが、本作では2D格闘ゲームの頃から親しまれていた“必殺技”の概念も残されている。

 飛び道具や空中を浮遊するような派手な演出はもちろん、それぞれのキャラクターの色が反映された“超必殺技”も用意されており、ド派手なバトルを楽しむことができるのだ。

 また、従来の格闘ゲームでは技を繰り出す際に複雑な“コマンド”を覚え、的確に入力する必要があったのだが、本作では1つのボタンだけで簡単に技が発動できるシステムが搭載されており、初心者でも手軽にゲームを楽しむ工夫が盛り込まれていた。

 これは昨今の格闘ゲームにも採用されるようになったシステムだが、90年代、PS時代に先んじてそれを導入していたということには驚かされてしまう。

 ちなみに本作のキャラクターデザインは、ことぶきつかさ氏が手掛けており(1作目はイメージビジュアルの製作のみ)、ことぶき氏はのちに『VS騎士ラムネ&40炎』や『セイバーマリオネットJ』といった人気作品のキャラデザや、数々のロボットアニメのコスチューム、メカニックデザインも担当している。

 ことぶき氏のアニメテイストなイラストは本作の世界観に非常にマッチしており、従来の3D格闘ゲームとは一線を画す、本作独自の路線を打ち立てることに成功した。

 本シリーズはその後も約4年に渡って新作が作られ続け、OVAにもなるなどさまざまなメディア展開を続けていくこととなる。ほかの作品とは一味違う世界観やシステムで独自のファン層を獲得した、名作格闘ゲームといえるだろう。

■破天荒かつ緻密に繰り広げられる駆け引き…『ファイティングバイパーズ』

 1995年にアーケードで稼働し、1996年にセガサターンへと移植された『ファイティングバイパーズ』(セガ)は、同社から発売されていた名作『バーチャファイター』とは一風違った作風が特徴の3D格闘ゲームである。

『バーチャファイター』は八極拳や中国拳法といった実在の格闘技を身につけたキャラクターが数多く登場するが、一方で本作は架空の拳法などとんでもない闘法を扱う登場人物たちが、実に破天荒な方法でバトルを繰り広げる。その経歴も番長に歌舞伎役者にファッションモデルとバリエーション豊かで、戦いに赴く背景もさまざまなのが面白い。

 また、本作の特徴として、キャラクターたちが対戦中に装備している“アーマー”が挙げられるだろう。相手からの攻撃を受けると徐々にダメージが蓄積していき、一定量を超えるとアーマーが壊れることで、大ダメージを受けてしまう。

 アーマーは肉体の各箇所に割り当てられているため、このアーマーをどのように攻めて破壊し、ダメージを与えていくか……という点に駆け引きが生まれるようになっているのだ。

 加えて、ほかの作品ではバトルフィールドがリングになっており、リング外に落ちると敗北というパターンも多いのだが、本作ではフィールドがフェンスなどの“壁”で囲まれているのも斬新だ。

 この壁を利用してダメージを与えたり、相手を追い詰めてラッシュをかけるなど、一風違った攻防が繰り広げられる点も、本作ならではの特徴だろう。その高い人気から、のちにPS2やPS3にも移植されるなど、90年代の作品でありながら根強いファンを持つ一作といえる。

 型破りなキャラクターの数々と独自のシステムを搭載した、実にオリジナリティあふれる3D格闘ゲームだ。

■豪華スタッフ陣が贈るPS参入作品…『トバルNo.1』

 スクウェア(現:スクウェア・エニックス)といえば、数々の名作RPGを世に送り出したことで有名だが、実はPSに参入した1作目が3D格闘ゲームだったことをご存じだろうか。

 1996年に発売された『トバルNo.1』は、『鉄拳』や『バーチャファイター』に携わった開発陣が集まり、キャラクターデザインに『ドラゴンボール』の作者・鳥山明氏を起用するなど、実に豪華な面々がタッグを組んで生み出された一作なのだ。

 宇宙を舞台としたSFテイストなストーリーで、惑星・トバルで開催される格闘大会「トバルNo.1」に、全宇宙からさまざまな闘士たちが参戦する。地球人はもちろん、鳥人や竜人のような異種族から果てはロボットまで、実に個性的なキャラクターばかり。

 ボタンごとに振り分けられた上・中・下段攻撃を使い分けることで多種多様な攻撃を繰り出すことができ、従来の格闘ゲームにおける“投げ”も、即時発動するのではなく相手を掴んだあとに“動かす”、“投げる”、“打撃を加える”といういくつかの選択肢が設けられている。

 これらのシステムのおかげで巧みな攻防、駆け引きが実現されており、当時としては非常に革新的な試みであった。

 また、格闘ゲームでありながらダンジョンに潜って宝物を探す“クエストモード”も搭載しており、対戦だけでなくローグライクな遊び方ができるのも本作の大きな特徴だろう。

 この“クエストモード”は後継作にもしっかりと受け継がれ、より本格的なストーリーと洗練されたシステムを持った本シリーズ独自の遊び方として進化していくこととなる。

 ちなみに、翌年に同社から発売され伝説的なヒットを叩き出したRPG『ファイナルファンタジーVII』の体験版が同梱されていたことも、本作の知名度を上げる一つの要因となったのかもしれない。

 豪華スタッフ陣が結集することで生み出された、独自の世界観と遊び方が楽しい、渾身の一作といえるだろう。

 

 PSが登場し普及したことで、格闘ゲームの表現方法も2Dから3Dへと大きく進化を遂げた。90年代を牽引した『鉄拳』、『バーチャファイター』シリーズはもちろんのこと、今回紹介したような名作格闘ゲームの数々に触れてみるのはいかがだろう。

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