『サントリーオールド』『BOSS7』も…オジサンになった今なら気持ちが分かる「90年代に放映された秀逸のテレビCM」を振り返るの画像
サントリー公式ホームページ「サントリーウイスキーオールド」より

 実家にあったビデオテープを久しぶりに再生してみると、懐かしいテレビCMが目に留まる。そういえば昔は見たいCMがはじまると、目当ての番組よりも注目して見ていたこともよくあった。そして、当時は意味がよく分からなかったものも、年齢を重ねた今となっては「分かるな〜」なんて思うことも多い。

 そこで、オジサンになった今なら気持ちが分かる、90年代中頃から流れていたテレビCMを振り返ってみようと思う。

■「恋は、遠い日の花火ではない。」そのテンション分かりすぎる…『サントリーオールド』

 まずは、長塚京三さんと田中裕子さんを起用した『サントリー オールド ウイスキー』のCMだ。少し年配の二人が若者たちの積極的な発言にドキッとしながらも、何か発展しそうな展開に最後は喜びの表現をジャンプで表す。

 このCMが流れた当時は、「大人ってよく分からん」と思っていた。ドキッとさせるような若い美人部下の眼差しと「課長の背中見るの 好きなんです」に、思わず「やめろよ」っていう言葉……まんざらでもない感じが微笑ましい。

 筆者が好きだったのは、田中裕子さんの弁当屋の店員編だ。サンドイッチやパンを販売しているお店にいつも買いにくる白衣姿の若いイケメン男性。

「毎日うちのお昼じゃ飽きちゃうでしょう?」と言う田中さんに「弁当だけじゃ ないから」と、男性は真っ直ぐ見据えてそう答える。思わず言葉に詰まり、後ろ姿を黙って見送る田中さん……。

 このCMは、ショーケースの向こうで振り返る田中さんの視線と表情からはじまる。当時は分からなかったが、“そろそろあの人がやってくるかな”と、実は待ち遠しさを感じているのは田中さんのほうだというのが見て取れ、こちらもなんとも言えず微笑ましいのだ。

 それから、別バージョンで若かりし頃の大森南朋さんが偶然通りかかり、田中さんの自転車のチェーン直しを手伝うのにもグッとくる。チェーンが外れて「ごめんね~ツイてないね~」という田中さんに「いや、おれツイてますよ」と、さりげなく返す大森さん。「えぇ?」と聞き返す田中さんが二度見するのだが、その表情がもうたまらない。

 このCMのキャッチコピーは、コピーライター・小野田隆雄さんの「恋は、遠い日の花火ではない。」という素晴らしいフレーズだ。この言葉のあと、大人の二人が少し飛び跳ねて嬉しさを表現するのだが、今となってはそのテンション分かるぞと言いたい。

 さらに、小林亜星さんの「夜がくる」のメロディが大人の情緒を盛り上げてくれる。振り返ると最高のCMだった。

■ガツンと言ってやりたい気持ちは痛いほど分かる! 『BOSS7』

 次はサントリーフーズの『BOSS7』だ。

 居酒屋で部下や後輩に愚痴を語るのが、伊藤正之さん(37歳 会社員という設定)だ。「グローバルとか何とか言ってるけどさ」「日本ってやっぱ世界でなめられてるじゃない」「いっぺんガツンと言ってやんなきゃだめよアイツらに」と、強気の発言を次々に繰り出す。

 どうやら、伊藤さんは外国に押され気味の日本に危機感を抱いているらしい。そしておしぼりで顔を拭きながら「オレだったら言っちゃうよ ガツンと言っちゃうよ オレそういうタイプだから……」と、おしぼりをテーブルに投げつけると、そこはまさかのクリントン大統領(そっくりさん)の膝の上。

 急に舞台は日米首脳会談に変わり、眼鏡をかけ直して振り返ると女性の通訳までいる始末。「君の率直な意見を聞こうじゃないか」「ガツンと言ってみてくれないか」とアメリカ大統領に言われては、さすがの強気なオジサンも固まってしまう。

 さっきまでの勢いはどこへやら、冷や汗をかきつつ、懐から缶コーヒーのBOSS7をそっと取り出して一口飲む……というCMだ。いや、さっきまでお酒を飲もうとしていたじゃん。というか、首脳会談で自前の缶コーヒーを飲む設定も面白い。

 このシリーズは、ちょっと調子に乗った発言をした人が突如として絶体絶命の状況に陥り、気持ちを落ち着かせるために缶コーヒーを飲むというもの。

 いや〜当時でも大好きなCMだったが、大人のオジサンになってとくに分かるのが「ガツンと言ってやりたい」クリントン編と、「若者に媚びを売りたくない」L‘Arc〜en〜Ciel編だった。

 ほかにも、アーネスト・ホーストに睨まれるマウスピースの男性や、貴乃花関に「強いだけじゃダメなんだよ」と言ってしまう八嶋智人さん、世界を敵に回した“しんちゃん”など、ユニークな設定が多かったな。

 

 90年代から00年代には、ほかにもユニークなCMが多かったもの。なぜかかつてはCMが煩わしくなく、むしろ待ち遠しく感じたものである。また機会があれば、もっと振り返ってみたい。

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