宇宙世紀『ガンダム』シリーズで屈指の人気を誇るシャア・アズナブル。たぐいまれなるモビルスーツ操縦技術から強いパイロットとして描かれるが、実は涙を流すシーンが多い。
ジオン・ズム・ダイクンの子として生まれ、幼い頃から戦いが身近にあり過酷な人生を送ってきたシャア。当然、涙を殺してきたことも多いだろう。そんな彼だからこそ、涙を流すシーンは強烈なインパクトを与える。
そこで今回は、赤い彗星と恐れられたシャアが「涙を流した」名シーンをいくつか振り返りたい。『機動戦士ガンダム』『機動戦士Zガンダム』『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』にそれぞれ涙するシーンがあるため、時系列順に見ていきたい。
■自分を慕う少女の死!シャア最大のトラウマとなる
まず、シャアが作中で初めて涙したのが『機動戦士ガンダム』の終盤。ただし、本作はテレビシリーズと『劇場版 機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』で多少演出が異なる。実際に涙するのは劇場版だが、今回は両方とも紹介したい。
テレビシリーズでは第41話「光る宇宙」で、そして劇場版では『めぐりあい宇宙編』で、アムロ・レイとモビルアーマー「エルメス」を駆るララァ・スンが戦闘を開始する。敵同士でありながら強いニュータイプ能力が共振し、アムロとララァは強烈に惹かれ合う。そして互いに分かり合えたかに見えたが、そこにシャアの乗るゲルググとセイラ・マスの乗るGファイターが加わったことで事態が変わってしまう。
相手が妹のセイラとは気づかずGファイターを攻撃しようとしたシャアをララァが制止し、その一瞬の隙をアムロが見逃さず、ビーム・サーベルでゲルググの右腕を切断。そしてあわや撃墜といったタイミングで、ララァがシャアをかばい、アムロの手によって命を落とすのだった。
テレビシリーズでシャアは体を震わせながら大声で叫びコンソールを叩いていたが、劇場版では感情を押し殺して静かに涙を流していた。テレビシリーズは、いつも冷静なシャアが感情を爆発させる希少なシーンだ。
■自身の振るまいを非難され殴られる!
シャアは『機動戦士Zガンダム』でクワトロ・バジーナと名前を変え、反地球連邦組織エゥーゴのパイロットとして戦う。しかし、第13話「シャトル発進」で自身の役割について問われた際、カミーユの反感を買って殴られた。
ブレックス・フォーラ准将とともにエゥーゴを立ち上げ、発言権が強いにもかかわらず、パイロットに甘んじているシャア。クワトロとシャアが同一人物ということは公然の秘密となっており、政治の舞台に立つべきと期待されていた。
しかし、シャアは「今のわたしはクワトロ・バジーナ大尉だ。それ以上でもそれ以下でもない」と、政治関与を否定。「上層部に対して意見はするが、パイロットなので責任は取らない」という子どものような振る舞いに腹を立て、カミーユは「そんな大人!修正してやる!」と殴りかかったのだ。
そして「これが若さか……」とシャアは涙を流す。この涙の解釈は難しいが「自分がどう行動すべきか悩み苦しんでいる」「幼い頃から戦争のなかで生き、青春らしい青春を送ってこなかった」など、さまざまな感情が爆発して涙を流してしまったのではないだろうか。