『銀河鉄道999』は、松本零士さんによる宇宙をテーマにした壮大なストーリーである。1977年『週刊少年キング』(少年画報社)で漫画の連載が始まり、それを原作としたテレビアニメ・劇場版アニメなど多くの作品が制作された。
そんな本作の魅力の1つが、ミステリアスな美女「メーテル」の存在である。今回は、多くの人々の心を掴み魅了した彼女の人気の理由と魅力について考えてみようと思う。
■鉄郎との関係は恋愛か母性か? 母親としても恋人としても魅力のある稀なキャラクター
メーテルはその美しさとともに、主人公・星野鉄郎との関係性が注目された。
そもそも鉄郎は10歳のときに機械伯爵によって実の母を殺された過去を持つ。彼はまだまだ母親に甘えたい時期にメーテルと出会い、メーテルに母の姿を投影していた。メーテルも、ときに寒さで震える彼を抱きしめ、温かい母性でサポートしていく。
しかし、過酷な銀河鉄道の旅は、鉄郎を少年から青年へと成長させていく。いつしか鉄郎はメーテルに守られるだけの存在ではなく彼女を守る存在となり、“一人の大人の女性”として想いを膨らませていくようになる。
メーテルもそれに応えるかのように、鉄郎に抱く感情は特別なものだったと思われる。物語終盤ではメーテルがそっと鉄郎にキスをするシーンもあり、劇場版では「私は あなたの少年の日の心の中にいた青春の幻影」とつぶやいていた。
旅のパートナーである二人の関係は、母と子、友情、そして時間の経過とともに恋人のような関係にも発展し、謎めいた二人の関係に読者は目が離せなかった。メーテルは母親としても恋人としても魅力のある、漫画界のなかでも稀有なキャラクターなのである。
■鉄郎との対比……魅惑的な入浴シーンもあり、大人女性としての美しさが巧みに描かれている
『銀河鉄道999』は、漫画やアニメでもメーテル以外のキャラクターはコミカルに描かれていることが多い。とくに鉄郎は10歳という設定もあり小柄な約3頭身で、幼児体型に近い。アニメ版ではガニ股で歩き、癇癪を起こして大声で叫ぶこともあった。
それに対し、メーテルはスーパーモデル並みの約8頭身のプロポーションで、鉄郎との身長差は2倍ほどあった。さらに、目の横になびく長いまつげ、膝下まで伸びる黄金のストレートヘア、しっとりとした優しく響く声……と、鉄郎と一緒にいると、メーテルの美しさはより際立っていたように思う。
また、『銀河鉄道999』ではメーテルの入浴シーンがたびたび登場するが、過酷な旅における癒しの場面でもあり、読者に安らぎを与えてくれていた。アニメ版においても、彼女のすらりとした裸体と膝までなびく金色の髪が鮮やかに描かれており、当時、その美しさに魅せられた人は多いのではないだろうか。
このようなことからメーテルは作品の中でも著しく美しい存在として際立ち、大人の女性の魅力を象徴する存在となったのだと思う。