■今いる世界のために“命”を燃やす少年・少女たち…『ぼくらの』ジアース

 2004年から『月刊IKKI』(小学館)にて連載され、そのあまりにも壮絶かつ緻密な世界観から話題を呼んだ作品が、鬼頭莫宏さんの『ぼくらの』だ。

 登場する15人の少年、少女たちは、巨大ロボットで敵を倒す謎のゲームに巻き込まれる。そのゲームのなかで彼らが搭乗する機体が「ジアース」である。

 ジアースは黒く、細長い手足を持つ500メートル超えの巨大ロボットで、四肢を用いての格闘戦や水陸両用の高速移動、レーザーを使っての遠距離攻撃など、実にオールマイティな性能を誇っている。

 作中でまず明らかになるのが、このゲームは平行世界の人間同士で繰り広げられており、敗北したらその世界そのものが問答無用で消失してしまうということだった。

 ならば勝ち続ければいいのだが、実はそう単純でもなく、このジアースを稼働させるためには、ある重すぎる代償が必要だったのだ。

 なんとジアースの動力源は、搭乗者の“命”。戦いが終われば搭乗者は勝敗に関わらず、必ず命を使い果たし死亡してしまう。つまるところ、対戦相手も同条件を課せられた“どこかの世界の誰か”であり、負ければ世界そのものの破滅、勝っても操作者の死……という、デスゲームという言葉すら生温い、世界存亡を賭けた戦いに巻き込まれていたのである。

 参加者たちはこの事実にうろたえるものの、ゲームの途中放棄もまた死を意味し、逃げることはできない。登場人物たちは各々の葛藤や苦悩にさいなまれながら、それぞれの思いを胸にジアースに搭乗し、どちらにせよ死ぬと分かっている戦いに赴くのだ。

 そのあまりに苛烈な設定や、登場人物たちの生々しい心理描写が話題となった作品で、ロボットアニメでありながら多くの読者の心に爪跡を残した。

 ちなみに「ジアース」という名前の由来は作品媒体によってさまざまなのだが、小説版では“自分たちが負ければ地球が滅ぶ”という覚悟から「Z earth」の名を冠している。ロボットバトルだけでなく、代償によって命を奪われる少年、少女たちの生きざまを強烈に描いた作品だ。

 

 作品によってロボットの特徴はさまざまだが、搭乗者に課せられる代償も作品ごとに随分と異なってくる。肉体や精神の変化、時間の流れ、そしてときには命まで……どの代償も決して軽くなく、苦悩する登場人物たちの姿に胸を締め付けられてしまう。

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