『蒼穹のファフナー』『トップをねらえ!』勝利のためとはいえ…ロボアニメ“機体に乗ることで引き起こされる大きすぎる代償”の画像
『トップをねらえ!』 Blu-ray BOX Standard Edition(バンダイナムコフィルムワークス)

 敵と戦うための武器として、そして“相棒”として主人公らとともに活躍する“ロボット”だが、なかには搭乗者に思わぬ副作用をもたらしてしまう機体も登場する。兵器として強力でありながら、乗る者に大きな“代償”を払わせるロボットの数々について見ていこう。

■機体と同化することで引き起こされる“染色体変化”…『蒼穹のファフナー』ファフナー

 2004年よりテレビ放送されたロボットアニメ『蒼穹のファフナー』では、近未来の地球に飛来した生命体・フェストゥムと、その侵攻を食い止めるべく兵器に搭乗する少年たちの戦いが描かれている。

 作中で主人公らが搭乗するのは、フェストゥムに対抗するために作り上げられ、本作のタイトルにもなっている有人兵器である思考制御・体感操縦式・“ファフナー”だ。

 搭乗者はシートの上で体を固定され、「ニーベルング・システム」によって指輪を媒体とし、指先の神経を介してファフナーと一体化する。これにより搭乗者の神経が刺激され、本来の性格から一変、戦うために必要不可欠である激しい“闘争本能”が呼び覚まされるのだ。

 まさに対フェストゥムにおける特効薬とも呼べる機体だが、実は、搭乗し続けると思わぬ副作用が発生してしまう。それがいわゆる“染色体変化”と呼ばれるもので、体内の“フェストゥム因子”が徐々に増幅し、結果として肉体にさまざまな変調をきたしてしまうのである。

 軽微なものであれば搭乗時に装着する指輪の跡が残る程度だが、そのうち赤く染まる目の色が戻らなくなったり、突発的な頭痛や失明、肉体の麻痺、昏睡状態に陥ることもある。そして最終的には全身が緑色の結晶で覆われ、砕け散って完全に消失してしまうのだ。

 人類のために作り上げられた兵器が未来を担って立つはずの少年たちを糧に動き、彼らの命を蝕み食い尽くしてしまう事実はなんとも重く、そして痛々しい。しかし、結晶となって散るその姿が皮肉にも美しいことに、どこか戦いへのいびつさを考えさせられてしまう作品だ。

■戻らない“時”の経過…『トップをねらえ!』バスターマシン3号

 1988年より、ガイナックスによってOVAとして発売された『トップをねらえ!』は、のちに『新世紀エヴァンゲリオン』を手掛けることとなる庵野秀明さんが初監督を務めた作品だ。2023年5月26日から「シリーズ35周年」として2020年公開版の再上映がされるなど、時代を超えて愛されるロボットアニメのひとつだ。

 作中では人類を脅かす宇宙怪獣を相手に、地球が誇る最強型決戦兵器「ガンバスター」を操る少女たちの戦いが描かれている。

 ロボットを用いたバトルもさることながら、本作は数々のパロディを用いた明るい作風と、それでいてしっかりとした科学設定やシリアスな展開を用いた重厚な“SF”要素も見どころの一つだ。

 そんな本作では「ウラシマ効果」と呼ばれる現象が頻繁に登場する。これはアルベルト・アインシュタインの「相対性理論」によって提唱されたもので、激しい速度差や異なる重力場において時間の流れが変化してしまうという現象を指す。

 すなわち、作中でガンバスターに搭乗し戦う主人公・ノリコらは、物語が進行すればするほどに故郷の地球と激しい時間のずれが生じてしまうということ。

 さらにこの「ウラシマ効果」を強烈に印象付けたのが、物語終盤に搭乗した“切り札”とも呼べる最終兵器・バスターマシン3号である。

 宇宙怪獣を根こそぎ殲滅させるための巨大なブラックホール爆弾であり、有人機として操作はできるが、ロボットというよりも自爆兵器といったほうがしっくりくるだろう。なぜなら、この爆発に巻き込まれたことでノリコらは先述の「ウラシマ効果」により、なんと1万2千年後の宇宙に帰還することとなってしまったからだ。

 もはや知り合いがいないなんて生易しいものではなく、文明そのものが消滅していてもおかしくない、途方もない年数である。人類の平和を守るためとはいえ、決して取り戻せない時という代償を払わねばならない恐ろしい最終兵器だ。

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