バトル漫画には数々の“重力”を操作するキャラクターが登場するが、いずれも苦戦必至な強者ばかり。そこで今回は、重力を自在に操り、主人公に立ちはだかった能力者たちを紹介していきたい。
■仕込み刀と重力を操る海軍随一の剣士! 『ONE PIECE』イッショウ
能力者たちがぶつかり合うバトル漫画は数多く存在するが、1997年より『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載されている尾田栄一郎氏の『ONE PIECE』は、その絶大な人気から能力バトル漫画の金字塔とも呼べる作品である。
作中では主人公・ルフィをはじめ数々の“悪魔の実”の能力者たちが登場するが、そのなかで重力を操作するのが、海軍大将の剣士・藤虎ことイッショウだ。
彼は目が見えずとも、卓越した剣術の腕前と圧倒的な能力を駆使して戦っていく。その闘法や古風な言葉遣いは、時代劇の『座頭市』を彷彿とさせる。
イッショウの“ズシズシの実”の能力は、指定した物に対する重力を自在に操作することができるというもの。重くすることで圧をかけて押しつぶすことはもちろん、逆に反重力を用いて巨大な軍艦を浮き上がらせるなど、操作可能な物体のサイズも種類も実にバリエーションに富んでいる。
また、作用する方向も自由自在で、上や下だけでなく真横に重力を発生させ、相手を吹き飛ばすといったことも可能だ。
実にシンプルな能力に思えるが、特筆すべきはその効果範囲。なんとこの重力の発生範囲は宇宙空間にまで達し、隕石などを引き付けて対象目掛けて落下させたりと、とんでもない使い方もできる。さらにイッショウ本人の剣術の腕前もあり、対峙する者にとって苦戦はまぬがれない。
戦況は能力の質ではなく、使い方によって左右される……そんな事実を知らしめてくれる、なんとも凄まじい能力者である。
■じわじわと襲い掛かる無重力空間の恐怖…『ジョジョの奇妙な冒険』ラング・ラングラー
能力バトル漫画といえば、1986年より『週刊少年ジャンプ』で連載が開始された、荒木飛呂彦氏の『ジョジョの奇妙な冒険』も忘れてはいけない。
部ごとに舞台となる時代や国、登場人物が変化していく本作だが、第6部にて敵として登場したラング・ラングラーこそ、重力を操るスタンドを使いこなすキャラクターだ。
彼はプッチ神父の命を受け、主人公・空条徐倫が持つ特殊な“DISC”を奪うため、身につけたスタンド「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」の能力を駆使して彼女に襲い掛かる。
そのスタンド能力は、本体が吐いた唾液を浴びた人物を無重力状態にするというもの。しかもこの能力は対象が触れた物へと伝搬していき、知らず知らずのうちに周囲の物体にまで影響が及ぶ。
無重力……と聞くと、“たかが体が宙に浮くだけ”と軽く見てしまいがちだが、実はこの能力の真の怖さはほかにある。無重力によって肉体の自由が奪われるだけではなく、対象者が触れた空気までもが影響を受け、その場から失くなってしまうのだ。すなわち、対象者の周囲はやがて真空となって宇宙空間のようになり、気圧の問題から体内の血液が沸騰し、窒息よりも先に死に至ることに……。
ちなみに、この能力はラング・ラングラー本人にも影響を及ぼすが、スタンドの影響なのか彼の指は吸盤状になっていて壁や天井に張り付くことができ、自由自在に動き回ることが可能。重力のみならず、そこから生まれる真空という特殊な空間をも活用し戦う、実に恐ろしいキャラクターといえるだろう。