■台風なんて怖くない! 荒波に向かってボールを蹴りまくる“猛虎”日向小次郎

 主人公・大空翼のライバルといえば、やはり日向小次郎だろう。父を亡くしたのち、母親や兄弟たちを支えるべく、小学生時代は家計を助けるべくアルバイトをしていた努力の天才だ。どちらかというと裕福な家庭で育った翼や若林といった天才肌のプレイヤーには、時折憎悪のようなものをたぎらせていた。

 そんなハングリー精神が彼を支えていたのだが、中学時代は特待生として東邦学園に入学したことで、バイトもしなくなりハングリー精神もいつの間にか消えてしまった。

 それが全面に出ていたのが、都大会決勝戦の武蔵中との対決だ。エースであり、心臓病を抱える三杉淳が前半途中から投入されると簡単に2点を失い、ワンマッチのシーンでは発作を起こした三杉に気を取られてボールを奪われてしまう。

 試合後、厳しさが抜けてしまった日向を“牙の抜けた虎”と叱咤した小学生時代の恩師・吉良監督のいる沖縄へ単身武者修行に出る。そして、吉良によって深夜まで及ぶ特訓を行い、心身ともにたくましく成長するのだ。

 沖縄の海は台風による荒波となっており、海岸はまさに危険地帯。しかし、コイツらは一向に気にせず、むしろ海に入ってボールを蹴り出す始末だ。そして、日向は荒波にも負けない強靭な足腰や、波を切り裂く強烈なシュート(のちの「タイガーショット」)を身につけることになる。

 さすがは、“猛虎”といわれるエースストライカーの日向小次郎だ。カッコいいぜ!

 とはいえ、でも迫りくる台風の中で海の特訓はいかがなものか……。万が一にも日向が内職を頑張る母や幼い弟や妹を思い出していたら、足元をすべらせて荒波に飲まれていたかもしれない。吉良監督もかなりの荒行をさせたものだな……。

 

『キャプテン翼』には、ほかにも本気になったシーンがカッコ良かったキャラが存在する。まあ、みんな少年で真剣勝負をするのだから、普段から本気といえばそうなのだが……。

 筆者的には心臓病で常に全力でプレーできない三杉が、雨の中で死力を尽くした小学校編の準決勝戦も忘れられない。また、紹介したいと思う。

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