■無名の凄腕パイロット
名前も顔も描写されていない、異様に強いモブの兵士がいる。それが第32話「強行突破作戦」に登場する、キャメル艦隊のリック・ドムに搭乗したパイロットである。
このリック・ドムは、キャメルに肉薄するガンダムを正面から迎撃。盾越しのガンダムを相手にヒート・サーベルを何発も命中させ、すでにニュータイプとして覚醒していたアムロが駆るガンダムのビーム・サーベルを避ける様子も確認できる。
ほとんどのリック・ドムはすれ違いざまに両断されて撃墜されるであろうシチュエーションで、これほど激しい競り合いを見せるのは凄まじい操縦センス。アムロと出会わなかったら外伝の主人公を張れていたのではないか。
いずれにしても、普通のパイロットでは有り得ない操縦センスの高さ。度を越したベテランパイロットだったのか、隠れたニュータイプだったのか、それとも何か別の特殊能力者だったのか。顔が見えないばかりに謎は深まる不気味な人物である。
このパイロットは普通に考えると戦死したのだろう。しかし搭乗機が派手に爆発しても生き残っているパイロットは『ガンダム』シリーズでは少なくない。パイロットの表情がいっさい描写されていないことを考えると、戦死と言い切ることもできないのかもしれない。もしかすると、後の『ガンダム』シリーズで活躍している誰かである可能性もゼロではない。
■テム・レイの回路
制作者の「テム・レイ」ともどもネタとして扱われがちな「テム・レイ回路」。これも今なお議論されるミステリーである。
このテム・レイ回路、実は一度も性能を見せていないのである。テム・レイ回路を渡されたアムロが、父テム・レイと別れた直後に捨てられたので、実際に「ガンダム」に搭載されてはいないのだ。そのため、本当の性能は未知数となっている。
サイド6のジャンク屋2階で一人研究を続けるテムは、アムロいわく「酸素欠乏症」。そのため言動はおかしくなっているところがあるとはいえ、彼はザクを参考にしてガンダムを作った天才である。実は本当に凄い回路だったという可能性も低くない。
軍の施設とは違い、普通のアパートで暮らしていたテム・レイが、旧式の回路に偽装していた可能性は充分にあり得る。またメカニックに詳しいとはいえ、アマチュアのアムロがそれを見抜けない可能性も同じく低くないだろう。
いろいろなゲーム作品でこの「テム・レイの回路」が強化アイテムとして登場している。だがその性能も、むしろ機体の性能を下げるアイテム、リスクはあるがユニークなメリットがあるアイテム、普通に優秀なアイテムと、その効果は作品によってバラバラである。
このことから、テム・レイ回路は未だに性能がはっきりしない、ミステリーアイテムとなっている。太古の遺跡から発掘されたオーパーツのようなロマンを感じる存在だ。
以上、「ガンダムの日」にちなんで『機動戦士ガンダム』のミステリーを4つ紹介した。特にリック・ドムパイロットに関しては、異様な存在感と、後付け設定も全くされない謎があることから、得体の知れない恐怖すら感じてしまう。