誰もが名前を知っている人気ミュージシャンが、俳優としてドラマや映画に出演することが稀にある。彼らは作中でもミュージシャン役として音楽を奏でるシーンがある場合がほとんどだが、なかには「本業が俳優?」と思ってしまうほど上手な芝居をする人もいる。
彼らが違和感なく芝居をする様子には、つい「天は二物を与えた」と感嘆してしまう。今回はそういった作品郡のなかでも、漫画やアニメの実写化に出演したミュージシャンたちを紹介したい。
まずは、二階堂ふみさんとGACKTさんのダブル主演で大ヒットを記録した、2019年の映画『翔んで埼玉』。『パタリロ!』で知られる魔夜峰央さんのエッセイ漫画が原作であり、作中では埼玉県は東京都民から忌避される僻地として描かれている。
GACKTさんが演じたのは、容姿端麗なアメリカ帰りの高校生ながら、実は埼玉出身の麻実麗。現実感のないラグジュアリーな存在感は、ひときわ異彩を放っていた。
GACKTさんはこのほかにも2007年のNHK大河ドラマ『風林火山』で上杉謙信を演じるなどの俳優経験があり、アニメの声優としても活動していた。自らを“表現者”と称し、ミュージシャンという枠にとらわれない活躍を見せるGACKTさん。芸能活動も徐々に再開しているので、まずは2023年公開の『翔んで埼玉』の続編を楽しみにしたい。
続いては、矢沢あいさん原作の『NANA』で主人公のひとり・大崎ナナを演じた中島美嘉さん。ヴィヴィアンウエストウッドの衣装に身を包んだパンクロックな出で立ちと、原作から飛び出してきたかのような再現度の高さが公開前から話題となった。
主題歌の「GLAMOROUS SKY」は中島さんが「NANA starring MIKA NAKASHIMA」の名義で歌い、大ヒット。映画は一部キャストの変更があったものの、2作公開された。原作ファンにとっては、これ以上ないぴったりの文句なしのキャスティングであった。
また、同じ矢沢あいさん原作の実写映画には、L’Arc〜en〜Cielのボーカリストであるhydeさんも出演していたことがある。それが、幻想的でミステリー要素のあるラブストーリー『下弦の月〜ラスト・クォーター』(2004年)だ。
原作漫画では小学生の蛍を主人公に、大人同士の恋愛を覗き見るような感覚で進む物語だったが、実写映画では、主人公は記憶喪失の女子大生・望月美月(イヴ)となっており、ストーリーもどことなく大人の雰囲気が漂っている。
hydeさんが演じたのは、アダムと呼ばれる物語の根幹に関わるキーマン。謎の洋館にいる、ロンドンから来たミュージシャンだ。原作漫画では吉井和哉さんをモデルにしたといわれているが、線が細く儚い雰囲気の美青年だった。
ちなみに、実写映画のイヴを演じたのは栗山千明さん。2人が並ぶシーンはまさに絵のような美しさだった。同作は矢沢さん原作の作品のなかでは意外と知られていない作品なので、もったいなく感じてしまう。