「ジャンプ黄金期」という言葉がある。おもに1983年から96年にかけて『週刊少年ジャンプ』(集英社)が爆発的に人気を博した時代だ。1994年には発行部数が653万部の歴代最高を記録し、『ドラゴンボール』や『SLAM DUNK』といった現在に至るまで人気を誇る漫画も多く輩出された。
もちろん、派手さはなくても良作だった漫画が多々ある。そこで、ジャンプ黄金期を縁の下で支えた作品たちを振り返ってみよう。
■迫力があり過ぎて好き嫌いが分かれた…? 『ゴッドサイダー』
まずは、1987年から連載スタートとなった巻来功士氏の『ゴッドサイダー』だ。『北斗の拳』のスタッフを務めていた巻来氏だけに迫力ある画力が魅力だったのだが、いかんせん少々刺激の強いシーンや、仏教・キリスト教に加え、悪魔学や聖書に登場する名前が多く登場したこともあり、小学生には少し難しい設定ともいえた。
本作ではゴッドサイダー(神側の人間)とデビルサイダー(悪魔側の人間)との戦いが描かれている。主人公・鬼哭霊気はデビルサイダーの王でもあるサタンの息子なのだが、彼はサタンの血を引きながらもゴッドサイダー側についてサタンの部下と熾烈な戦いを繰り広げていく。
この作品で強烈なインパクトを与えたのが、ド派手なコスチュームのリリスと、赤ん坊のパズスだ。パズスはデビルサイダーでもなく別の勢力として登場するのだが、ちょっと顔が老けた赤ん坊だけに余計に怖かった。しかも言葉遣いがめちゃくちゃ悪い……。
一番びっくりしたのが、ラスネール伯爵のビジュアルだ。どう見ても『スター・トレック』(1966年)のスポックで、絶妙に上手いと思った。
『ゴッドサイダー』は内容的に面白かったのだが、少年少女が読むジャンプだけに、どうしても好き嫌いが分かれただろうな。
■よく教師になれたものだ…怪盗グループのリーダーが究極の「アホ」という面白い設定だった『ついでにとんちんかん』
次は1985年から連載がスタートした、えんどコイチ氏による『ついでにとんちんかん』だ。普段は中学校の教師だが、実は“怪盗とんちんかん”のリーダーでもある間抜作が主人公を務める。“究極のアホ”ながらも教師になれてしまった不思議な人物でもある。
怪盗とんちんかんはリーダー・抜作を含めた4人組で、レッド・シロン・グリンは全員中学生。一応変装をしているものの、どう見てももろバレであり、抜作にいたってはそのまま顔出ししている。
抜作は頭の中が空っぽで不死身の肉体を持つ。なぜか大家のおばあさんとは険悪で戦うこともある。必殺技(!?)の「いきなり尻みせ」も面白かったのだが、それ以上にインパクト大だったのが、警察官である天地くんの「いきなり前見せ」だった。こ、これはさすがに真似できない(いや尻みせもムリ……)。
当時、この作品は筆者のクラスでも大ウケで、抜作の似顔絵がかなり流行った。簡単に描けるので、図工の時間に抜作を描き提出するクラスメイトがいたほどだ。もちろん先生から「バカ者!」と叱られてしまうのだが、「バカではなくアホです」と抜作と同じようなセリフでさらに怒られていた強者もいた。