■作戦を立てる側の身にもなってほしい「スメラギ・李・ノリエガ」
最後に、『機動戦士ガンダム00』よりプトレマイオスの女性艦長、スメラギ・李・ノリエガを紹介しよう。彼女は艦長ではないのだが、作戦の立案をするなど艦内では責任者を担う存在である。
ヴェーダという量子型演算処理システムによって選ばれた人員で構成されるソレスタルビーイング。スメラギはその優れた戦術眼で、組織が保有する4機のガンダムに搭乗するガンダムマイスターをまとめあげていたが、クセ者たちの身勝手な行動にたびたび頭を悩ませていた。
第5話「限界離脱領域」にて、人革連の「超兵」ソーマ・ピーリスの暴走による砲撃で切り離されてしまった、低軌道ステーションの重力ブロック。ガンダムキュリオスのパイロットであるアレルヤは200人以上の人々の命を救うため、ヴェーダによって推奨されたミッションを放棄し、独断でガンダムを駆り救助に向かうのだ。
その勝手な行動を知ったスメラギは「なにやってるのあの子!」と呆れかえるもすぐに作戦を立案し事態は収束するのだが、このアレルヤの行動によって、組織のプランの大幅な修正が必要になったほか、キュリオスのパイロットが若い男性であることが人革連に知られ、デュナメスの高高度狙撃能力を世界にさらす形となってしまった。挙句、マイスターや指示を出したスメラギの適性に関する嫌味をティエリアから言われる目に合い、アレルヤの勝手な行動によって本来不要な面倒を被ることとなったのである。
続けて第7話「報われぬ魂」にて合同軍事演習に武力介入した刹那。そこで相対したMSのパイロットが、刹那が過去に所属していたゲリラ組織の指導者・サーシェスの姿と重なり、コックピットから出てその身を敵前に晒すという暴挙に出た。ロックオンの介入によりその場を切り抜けたものの、スメラギはミッションの手順を大幅に省略し、「もう……。あの子のせいでミッションプランがぐちゃぐちゃよ……」と再び人的要因による苦労をにじませた。
組織の作戦立案という計り知れない重圧を背負っているにも関わらず、マイスターたちの身勝手な行動に振り回されるスメラギ。飲酒をすることで不安な気持ちをごまかしている彼女の心に、安寧が訪れることを祈るばかりである。
『ガンダム』の世界で多くの命を預かる「艦長」という究極の役職。組織の上層部や部下からの重圧、パイロットの身勝手な行動により、得てして不遇な扱いを受けているキャラクターも多い。しかし各キャラの問題への向き合い方から、作中でも人間味がよく出ている立ち位置でもある。
なかなか報われずとも大役をこなしている艦長キャラたち。せめて我々視聴者だけはねぎらいの気持ちを忘れずにいようではないか。