■拳王を前に決起する南斗六聖拳最後の将『北斗の拳』ユリア

 1983年に『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載が開始された『北斗の拳』は、武論尊氏が原作を、そして原哲夫氏が作画を手掛けた、世紀末を舞台にしたバトル漫画だ。

 主人公・ケンシロウが一子相伝の暗殺拳・“北斗神拳”を使い、数々の強敵と戦っていくのだが、彼の恋人である美女・ユリアもまた、自身の“血縁”にまつわる奇妙な運命を辿ることとなる。

 物語の序盤、自ら命を絶ったかに見えたユリアだったが、実は“南斗五車星”の面々に保護されており、秘かに生き長らえていた。実は彼女は“南斗聖拳”の正統血統者であり、本人も意図しないところで北斗と南斗の戦いに巻き込まれていたのである。

 やがて、宿敵・ラオウが率いる拳王軍が勢いづいたことを受け、ユリアは自身の素性を隠し、“南斗最後の将”として決起することとなった。

 鋼鉄の甲冑に身を包み、頭部も鉄兜で覆って正体を隠し、謎に包まれた人物として“南斗五車星”の面々を使い動いていく。

 最終的には自身が生きているという事実をケンシロウに告げ、再会を望むのだが、時を同じくしてラオウもまたこの正体に気付き、動き出してしまう。

 死亡していた彼女が生きていたということはもちろん、彼女が“南斗”の血を継ぎ、最終決戦におけるキーキャラクターになるとは、当時の読者は予測できなかったのではないだろうか。

 多くの人々に愛され、力はなくとも最後までケンシロウらと戦い抜いた、作中屈指のヒロインキャラクターである。

 

 顔を隠し、甲冑に身を包んだキャラクターたちを見ると、恐ろしい雰囲気を感じ取るのはもちろん、その仮面の下の“素顔”にも思いを馳せてしまうものだ。銀河をまたにかける賞金稼ぎや戦場に立つ将軍の正体が“女性”であったという事実は、読者やプレイヤーたちに強烈なインパクトを与えてくれるだろう。

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