全身を覆う“鎧”は見る者に凄まじい威圧感を与えるが、一方でその中身が“女性”だったことに驚いてしまった……という場面も少なくはない。そこで、漫画やゲームに登場する“甲冑”や“アーマー”に身を包んだ女性キャラクターたちについて見ていこう。
■技術を駆使し銀河を渡り歩くバウンティハンター『メトロイド』サムス・アラン
1986年に任天堂から発売された、ファミリーコンピュータのディスクシステム用ソフトが第1作目となる『メトロイド』シリーズは、主人公であるサムス・アランを操作し、数々の惑星を探索していくアクション作品である。
硬派なSFの世界観がウリとなる本作で、一貫して主人公を務めるバウンティハンター(賞金稼ぎ)のサムスは、全身を覆う特殊なパワードスーツに身を包み(第1作目はサイボーグという設定)、ビームやミサイルといった近未来兵器を使いこなすことで、立ちはだかる敵を撃退していく。
このスーツはサムスの遺伝子情報を組み込んだバイオ素材が使われており、鳥人族から託された数々のオーバーテクノロジーが搭載されているという。攻撃面はもちろんのこと、外部からエネルギーを吸収して傷を修復したり、「モーフボール」と呼ばれる小さな球体に変化し移動するなど、さまざまな場面でサムスの力となってくれるのだ。
そんなサムスだが、アーマーの下の素顔はなんと金髪碧眼の美女。この姿は、初代作品を一定時間以内にクリアすることで見られる特殊エンディングのなかで確認することができる。そのゴツい見た目と男性を思わせるクールな喋り方から、素顔が女性であったことに驚いたファンも少なくないだろう。
加えて、サムスが女性だと広く知られるようになったのは、別系統の作品である『ニンテンドウオールスター!大乱闘スマッシュブラザーズ』(1999年)への参戦の影響も大きいようだ。
本作では「ゼロスーツサムス」の名称となり、アーマーを脱ぎ捨て、青いラバースーツのような軽装のみになった姿を披露したサムス。本来のアーマーを用いた兵器攻撃から一変、こちらは素早い体術や手にしたハンドガンのみで戦う、身軽なキャラクターとなっている。
作品ごとにさまざまな進化を見せつけ、数々の任務をこなしていくその姿はまさに“宇宙の守護者”。メカや兵器を使いこなす力強さと、女性としての可憐な姿が見事に融合したキャラクターである。
■かつての憧れを追い続けた強くも儚い六大将軍…『キングダム』摎
2006年より『週刊ヤングジャンプ』(集英社)にて連載が開始された原泰久氏の『キングダム』。古代中国の春秋戦国時代末期の戦乱を舞台に、天下の大将軍を目指す少年・信と、彼を取り巻く人々の群像劇を描いた人気作品だ。
本作にも、女性でありながら仮面と甲冑で素性を隠し戦い続けたキャラがいる。それが、六大将軍の一人・摎(きょう)である。
摎は口元のみが見える仮面と兜、甲冑の上にマントを羽織った姿で戦場に立ち、その圧倒的な戦力で数多くの勝利をもぎ取ってきた武人だ。しかし、仮面の下は容姿端麗な美女であり、作中屈指の人気の大将軍・王騎の妻となる予定でもあった重要なポジションの人物なのである。
摎は戦神(いくさがみ)と呼ばれていた昭王の血を受け継ぎ、さらに幼い頃から王騎の姿を見続けたことで、その“武人”としての才能を開花させていく。相手を殲滅するまで戦い続けるその苛烈な戦っぷりで、瞬く間に六大将軍の一人へと昇りつめた。
彼女が仮面をつける理由は“女性”であるということを隠すためだが、加えて自身が“昭王の娘である”という事実を探られないように……という思いも込められていた。
幼い頃から王騎に対して憧れを超越した強い感情を抱いており、自身が城を百個落とした際には、王騎の“妻”にしてほしいと約束させるなど、作中では乙女な一面も見せている。
大人になってもこの誓いを忘れておらず、約束を果たすまで残り城1つというところまで迫るものの、強敵・龐煖と対峙したことで無惨にもその夢は断たれてしまうこととなった。
複雑な生い立ちでありながら、憧れに向かってまっすぐ突き進み、すんでのところでそれを断たれてしまう姿には、“戦場”の苛烈さ、儚さを思い知らされてしまう。凄まじい戦闘力のなかに、どこか悲し気な人間臭さを残す仮面キャラクターだ。