仮面ライダー生誕50周年を記念して制作された、庵野秀明さん脚本・監督による映画『シン・仮面ライダー』。本作で仮面ライダーに変身するのは池松壮亮さん、柄本佑さんと、テレビシリーズに比べてやや年長の俳優がキャスティングされている。
仮面ライダーといえば、とくに『仮面ライダークウガ』以降は20代のイケメン俳優のイメージが強いかもしれない。しかし実は、渋くてカッコイイ“おじさんライダー”も数多く登場している。今回はそんなおじさんライダーを3名紹介していく。
■『仮面ライダーW』で吉川晃司が演じた鳴海荘吉/仮面ライダースカル
2009年から放送された『仮面ライダーW』に登場する鳴海荘吉/仮面ライダースカルは、主人公・左翔太郎が所属する鳴海探偵事務所の先代所長で、師匠とも言える存在だ。
ハードボイルドを体現したような人物だが、その心の奥では依頼者を非常に大切にしており、自分の住む街・風都を“絶対に泣かせない”という、強い信念を持っているのも特徴だ。
そんな鳴海を演じたのが、ミュージシャンとして名を馳せる吉川晃司さんだ。容姿・立ち振る舞い・生き様すべてがとにかくかっこいい荘吉に、吉川さんははまり役だったと思う。
荘吉は既婚で子持ちなのだが、相棒のマツに妬まれるほど女性から好意を持たれていた。仮面ライダーであり続けるために家族とは会わないと決めているが、家族(特に娘の亜樹子)への愛情はとても深い。
死に際に彼が、弟子である翔太郎に自分の帽子をかぶせ、「似合う男になれ」と自分のすべてを託すシーンは印象的だった。過去には「半熟のお前に帽子はまだ早い」と言っていたのを思うと、ぐっとくるものがある。
また本作で仮面ライダーWが放つ決め台詞「さあ、お前の罪を数えろ」は、もともと荘吉のものだ。その由来には荘吉と相棒のドラマが絡んでおり、それを知るとよりいっそう味わい深く感じられる。
■『仮面ライダーアギト』で菊池隆則が演じた木野薫/仮面ライダーアナザーアギト
続いては、2001年から放送された『仮面ライダーアギト』に登場する木野薫/仮面ライダーアナザーアギトを紹介したい。職業は医者で優れたオペの腕を持つが、医師免許を剥奪されたいわゆる“闇医者”である。コピー
そんな木野を演じたのは、演技トレーナーとしても活躍する菊池隆則(現芸名:樋口隆則)さん。黒ずくめの服もサングラスもよく似合っていて、独特の存在感を放っていた。
木野はかつて自分に助けを求めた弟を救えなかったトラウマから、“すべての人間は自分が救わなければならない”という妄執に囚われている。そのせいでアギトの力にも固執し、“アギトは自分だけでいい”とまで思い込むように……。
群像劇である本作では、仮面ライダーの変身者それぞれの成長が描かれていて、闇落ちした木野も例外ではない。しかし彼の物語は少し物悲しい結末を迎えることになる。筆者もそのエピソードを視聴した際は思わず涙してしまった。