ゲーム『桃太郎電鉄』シリーズの最新作『桃太郎電鉄ワールド~地球は希望でまわってる!~』が2023年11月16日に発売されることが発表され話題となっている。1988年12月にファミコン用ソフトとして発売され、今年で35周年を迎える同シリーズは、もともとはRPG『桃太郎伝説』の派生作品だった。『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』とは違った「和風」な世界観を採用し、ところどころでギャグ的要素も盛り込まれており、当時の子どもたちに大人気だったゲームでもある。
今回は、今なお人気の高いファミコン版『桃太郎伝説』を振り返ってみよう。
■馴染み深い「桃太郎」が主人公で鬼たちを"こらしめる"という概念とコミカルな演出
RPGを語るうえで欠かせないのが、ファミコンで一世を風靡した『ドラゴンクエスト』だ。1986年に発売されて以降、幾多のゲームが『ドラクエ』を手本としていたものだったが、それに匹敵する面白さだったのが、ハドソンから発売された『桃太郎伝説』である。
本作は、1987年10月に発売された。超大作だった『ドラクエ3』が、その翌年の2月に発売予定とされていたので、まさに発売時期は申しぶんないものだった。
RPGといえば“勇者”という概念が定着していた当時、主人公が「桃太郎」というのも斬新だったな。桃太郎は幼少期から誰もが知るキャラクターであるため、感情移入しやすい。また、パッケージにも記載されている“コミカルRPG”というのがどんなものか、子どもながらに興味深々だった。
桃太郎といえば「鬼退治」なのだが、イヌ・キジ・サルを引き連れて鬼ヶ島へと乗り込む。うむ、まさにRPGにうってつけのテーマといえよう。それにしても敵との戦いに勝利するとき、“やっつける”のではなく、“こらしめる”という表現が良かったな。そして、鬼側も人間を食べたりといった残酷なことはしない。
『ドラクエ』に登場する呪文・ザキなんかは“息の根を止める”という演出だっただけに、このあたりの演出は子ども向けで見事だった。さすがは桃太郎だ。
後述するが、コミカルな演出といえば、やはりゲームデザインを手がけた『ジャンプ放送局』(集英社)の放送局長だったさくまあきらさんの功績が大きいだろう。筆者も『週刊少年ジャンプ』は最終ページまで必ず読んでいたが、おおいに笑わせてもらったものだ。
■何度も口ずさんでしまうゲーム音楽! テンポのいい戦闘シーンも楽しかった
『桃太郎伝説』は、グラフィックと音楽が非常にマッチしているゲームだった。タイトルロゴ画面は「鬼退治へ行けるのか?」というくらい可愛いイヌ・キジ・サルが登場していたな。サルにいたっては、戦闘意欲がまったくなさそうにも見えるぞ。
ゲーム音楽はサザンオールスターズのベースを担当している関口和之さんが手がけているのだが、戦闘シーンのBGMもテンポがよくてノリノリになってしまう。ちなみに関口さんは、のちの桃鉄シリーズの音楽も手がけている。
そして、グラフィックのイラストを担当しているのは土居孝幸さんだ。彼も『ジャンプ放送局』の作画を手がけたことで有名だが、局員として誌面に登場したりもして活躍していたな。オープニングの桃太郎のイラストなんて、まさに『ジャンプ放送局』に出てきそうだった。ラスボスとなる「えんま大王」も迫力があり、テンションが上がったものだ。