■原作でめいけんチーズはばいきんまんの仲間だった!?

 アンパンマンの“パン工場のなかま”として、めいけんチーズは欠かせないキャラクターだ。かの有名な声優・山寺宏一さんが声を担当し、犬の鳴き声でありながら情緒あふれる表現力を見せているのも魅力の1つだ。

 しかしこのめいけんチーズ、実はばいきんまんの仲間だったという衝撃の過去を持つ。やなせさんによる初期のころの『アンパンマン』を収録している『だれも知らないアンパンマン やなせたかし初期作品集』(フレーベル館)には、チーズの初登場シーンがあった。

 このエピソードでは、アンパンマンが犬が苦手だと知ったばいきんまんが「チーズ」という名前の犬を連れてやってくる。しかしバタコさんが食べもののチーズを与えると彼女になついてしまい、しまいにはバタコさんの命令で仲間のはずのばいきんまんを攻撃するという結末に。

 それ以降、仲間になったチーズだが、その姿はアニメでお馴染みの可愛らしいビジュアルではなく、目の周りが黒く、体もアンパンマンやバイキンマンに比べるとかなり大きめ……と、ちょっと悪そうに見えるキャラクターだった。

 連載初期のころの『アンパンマン』は、チーズのように今の印象とは一味ちがったキャラクターの姿を見ることができるが、『だれも知らないアンパンマン やなせたかし初期作品集』を発行しているフレーベル館によると、“初期作品とアニメ版は混ぜこぜにしない”としているそうだ。

 ちなみに、公式ポータルサイトでは「チーズはどこから来たのですか?」という質問に対し、「森の中でおなかをすかせてないていたチーズを、アンパンマンが顔をあげて助けました。」と、アニメ版でのエピソードをもととした答えが載せられている。

■アンパンマンは服を着ていなかった!?

 アンパンマンの体はどうなっているのか疑問に思ったことはないだろうか。公式ポータルサイトによると「アンパンマンは生まれた時から服を着ていました。」とあり、「誰も身体を見たことがないので、何でできているのかはわからないのです。」とのことだった。

 しかし、『れんさいまんが アンパンマン』の第2話では、生まれたばかりのアンパンマンが服を着ていない様子が描かれている。「はだかじゃこまる」とジャムおじさんが服を作ろうとすると、「はだかのほうがいいよ」と外へ飛び出してしまうアンパンマン。

 すると警察に見つかって怒られてしまうのだ。ご立腹な警察にジャムおじさんが「いまようふくきせますから」と弁明して無事に済むのだが、それにしても急いで服を着せようとするジャムおじさんにたいして「ぼくきたくないよ」と逃げ出そうとするアンパンマンには驚きを隠せない。

 今の彼からは想像がつかない“破天荒ぶり”が垣間見える、初期作品のエピソードだった。

 

 子どものころから馴染み深い『アンパンマン』。しかしやなせさんによる初期の作品と、アニメ版『それいけ!アンパンマン』では、設定もかなり違っているようだ。

 連載当時を知らない世代から見れば、これらの設定を知ると驚いてしまうだろう。さまざまな変革を遂げてきた『アンパンマン』。初期作品でやなせさんが描いた一味違った本作を振り返ってみてはいかがだろうか。

  1. 1
  2. 2
  3. 3