■浦沢直樹が脚本を書き直したというエピソードも

 続いては、浦沢直樹さんによる柔道漫画『YAWARA!』。1989年10月に放送開始されたアニメも大ヒットした作品だが、実はその半年前の1989年4月に、当時人気絶頂だった浅香唯さん主演で実写映画化されている。

 前田日明さんや高田延彦さん、柔道家たちが多くカメオ出演しているのが特徴で、祖父・猪熊滋悟郎役に小林桂樹さん、父・猪熊虎滋郎役に菅原文太さんが出演し、耕作役を阿部寛さんが演じていた。

 同じく浦沢さんの漫画実写化作品といえば、『20世紀少年』が2008年から2009年にかけて全3部作で映画化されており、総興行収入は110億円を超えるヒットを記録。だが、それより約20年前に作られた『YAWARA!』については興行的に成功したとは言えず現在ディスク化もされていない。

 なお映画『YAWARA!』について、2022年に放送されたバラエティ番組『X年後の関係者たち〜あのムーブメントの舞台裏〜』(BS-TBS系)でゲスト出演した浦沢氏が当時の話を振り返っており、脚本を読んだ段階で「こうじゃないだろ」と感じ3日間徹夜して自ら書き直したと語る場面があった。映画のプロデューサーは「これ使わせていただきます!」とロケに出かけていったそうだが、試写会を見たところ新しいシナリオは一行も採用されておらず、怒った浦沢さんは記者会見を全てボイコットしたという。その反省を活かし『20世紀少年』ではガッツリと脚本に参加したというが、実写化は作者本人にとってもハードルが高いことが分かるエピソードだ。

 このほか、『シティーハンター』と並ぶ北条司さんの代表作品である『キャッツ・アイ』も1997年に実写化されており、内田有紀さん、稲森いずみさん、藤原紀香さんが来生三姉妹を演じた。

 主人公が次女の瞳ではなく三女の愛であることや、特徴的なレオタードがレザー衣装になっており、顔には『バットマン』のキャットウーマンのようなマスクも被るという大きな改変があった。

 原作が有名であっても、必ずしも実写版が有名になるとは限らない。それは原作の大きな改変も原因の一つだろう。大人の事情はさまざまあれど、原作ファンとしては、ぜひ原作をリスペクトする精神で作品を作ってほしいところである。

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