■鳴き声のみでの演技や声変わりまで魅力に変える
ジブリ作品で声優デビューした神木さんは2006年には国民的アニメ『ドラえもん』の劇場版『映画ドラえもん のび太の恐竜2006』にフタバスズキリュウのピー助役として出演。「ピューイ」という鳴き声だけで、キャラの感情を表現するという高度なテクニックを見せている。
それから3年後の2009年、細田守監督による『サマーウォーズ』でも主演を務めた。実は当時16歳だった神木さんは、声変わりをむかえていたという。変声期における不安定な声の上ずりなどが、“引っ込み思案で内気な性格”である主人公・小磯健二の役にマッチしていたようで、臨場感のある演技と音量があがると少し掠れてしまうような声が“生っぽい”とファンを魅了した。
本来であれば、不利になるはずの思春期特有の声変わりですら、彼は声優の仕事で見事に落とし込み、“それも味”としてヒリヒリと擦り切れるような思春期の男子を表現した。このように“現在の自分”が持つ特徴を魅力に変えてしまうところもまた、彼が名監督たちに選ばれる理由なのだろう。
■声優として賞を受賞し人気シリーズの主人公に抜擢
俳優としても高く評価されてきた神木さんだが、彼は声優としても輝かしい賞を受賞している。2016年に公開された新海誠監督のヒット作『君の名は。』では、主人公の1人である立花瀧役に抜擢され、俳優としてははじめて、名だたる声優たちをおさえて「第11回声優アワード 主演男優賞」を受賞する功績をおさめた。
また、超人気作に重要な役で出演して大きな話題となったのが、2021年に公開された『シン・エヴァンゲリオン劇場版』だ。彼はラストシーンで大人になった主人公・碇シンジ役を務めている。
庵野秀明監督が彼を起用した理由ははっきりと明かされていないようだが、緒方恵美さんのイメージが強いシンジの“その後”を見事に演じており、“シリーズ完結編”となる本作のラストシーンでのサプライズ演出とあって、神木さんのファンはもちろん、エヴァシリーズのファンも大いに沸いていた。
宮崎駿監督をはじめ、細田守監督や庵野秀明監督といった日本を代表するアニメ監督たちを魅了する神木さんの声優力。彼が出演する作品を見れば、その実力は明らかで、監督たちが神木さんをこぞって起用するのも頷けるだろう。
俳優として、そして、声優として確固たる地位を築いている神木さんの今後の活動からも、ますます目が離せない。