2023年4月にスタートしたアニメ『でんでんの電脳電車』(CBCテレビ)がいま注目を集めている。大きな特徴は、VTuber(バーチャルYouTuber)が「本人役」で出演していること。不思議な電車を舞台に、VTuberたちによるボケとツッコミの応酬が繰り広げられる、まるでドラマのような作りの一風変わった3Dアニメに仕上がっている。
その出演者の1人であると同時に、主題歌の作詞作曲も務めているのが、VSingerのユプシロンさんだ。本作では原案と一部脚本も担当。多才なクリエイターとしても注目を集めている話題のシンガーに話を聞き、その“素顔”に迫った——。(全2回中の1)
■個人の活動からメジャーアーティストに!? 注目のVTuber「ユプシロン」
近年、テレビや街中でも目にする機会が増えたネット発のカルチャーに「VTuber(バーチャルYouTuber)」がある。一口に「VTuber」と言ってもその活動は多岐にわたるが、このところ、特にめざましいのが音楽ジャンルでの活躍だ。今回、話を聞いたユプシロンさんも、そんな「音楽」を軸に活動するVTuber/VSingerの1人である。
中性的な歌声を特徴とするVSingerであり、ボーカロイド楽曲を制作するボカロP、さらには2022年末にバズった歌い手グループ「SODA KIT(ソーダキット)」のメンバーにして発起人でもある。代表曲のひとつである「フォージェリィ」は2023年4月現在、Spotifyで700万再生を記録しており、ファン以外からも注目を集めているアーティストだ。
ユプシロンさんがVTuberとして活動を始めたのは、2020年4月。いくつかの楽曲のカバー動画を投稿しつつ、同年6月には自らが作詞作曲した1stオリジナルソング「ステレオタイプ」を公開した。その後もハイペースでオリジナル楽曲を発表し続けている。
「個人でVSingerとして活動を始めて、ちょうど3年になります。最初は“歌ってみた”の動画を上げていたのですが、自分で作曲したオリジナル曲も早い段階から投稿して、精力的に一次創作にも取り組んでいました。そんななかでご縁がありまして、ポニーキャニオンさんからメジャーデビューすることになりました」
企業に所属しているわけではなく、趣味のサークルというわけでもない。「個人勢」と呼ばれるVTuberは少なくないが、メジャーデビューに至ったケースはまだ少ない。以前、ユプシロンさんはメジャーレーベルに所属できた理由を「オリジナル曲を作っていたから」だと分析していたが、今回、その「創作者」としての一面をうかがい知れる話が聞けた。