■同じ仮面ライダーの変身者が複数人いる
同作には「ファイズ」「カイザ」「デルタ」という仮面ライダーがメインで登場するが、強力な力を持つ変身ベルトを巡っての争いが物語の主軸となり、人間とオルフェノクのどちらにも変身者が多数現れた。こうした設定も前作までにはなかった要素だろう。
今までの仮面ライダーでは、変身ベルトが超常現象的に自然発生した。たとえば「クウガ」であれば霊石アマダムによって腰にベルトが浮かび上がるといったように、仮面ライダーの変身者は任意のタイミングでベルトを発現させることができた。
しかし『555』ではそうした演出とは異なり、仮面ライダーファイズはファイズドライバーを腰に装着し、ガラケー型のファイズフォンに「555」「ENTER」を入力し、ドライバーのバックル部分にセットすることで変身する。ベルトが物理的に存在し、それを登場キャラクターが奪い合う展開も従来の仮面ライダーとは大きく異なる点だろう。
『仮面ライダー555』全話の脚本を担当している井上敏樹氏は資料集『「仮面ライダー555」=555補完ファイル= (ファンタスティックコレクション)』(朝日ソノラマ)のインタビューで、「ベルト物語」と同作について語っている。従来のヒーローものではあまり描かれることがなかった力を巡っての争奪戦、そして力がどのように人を変えてしまうかということを描いており、ベルトはその「力」の象徴的存在として登場する。
第9作『仮面ライダーキバ』では名護啓介や紅音也や麻生ゆりなどが仮面ライダーイクサに変身し、第12作『仮面ライダーオーズ』では後藤慎太郎や伊達明らが仮面ライダーバースに変身した。『555』で描かれた「正義」をめぐる物語が、後の仮面ライダーにも継承されているのは間違いないだろう。
20周年を迎えた2023年、東映公式YouTubeチャンネルでは『仮面ライダー555』が毎週2話ごとに無料配信されている。最新作ではどのような「夢の続き」を見せてくれるか、今から期待大だ。