■避けようのない結末を自身の“スタンド”で知ってしまった…『ジョジョの奇妙な冒険』テレンス・T・ダービー
1986年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載が開始された荒木飛呂彦氏による『ジョジョの奇妙な冒険』。部ごとに時代や舞台を変え、繰り広げられる能力バトルが魅力の本作。
なかでも特殊能力・“スタンド”が登場する第3部はとくに人気なのだが、終盤で登場するテレンス・T・ダービーこそ、敗北時に個性的なセリフを放ったキャラクターである。
TVゲームの達人であるテレンスは、さまざまなジャンルのゲームで主人公・空条承太郎らと戦うのだが、彼のスタンド・“アトゥム神”は「問いかけに対し、相手の心から“YES”か“NO”の答えを聞くことができる」という力を持っており、終始、展開を有利に進めていた。
しかし、承太郎との野球ゲームの試合が開始してから戦況は一変。実は承太郎のプレイを横で見ていたジョセフが、自身のスタンドを用いて代わりに操作をしていた……というただの“イカサマ”だったのだが、テレンスはこれを見抜くことができず、あえなく敗北。
今までの余裕に満ちた態度から一変し、必死に命乞いをするテレンスに、承太郎は「右の拳で殴るか? 左の拳で殴るか? あててみな」と、質問を投げかける。
右、左とそれぞれ確認するが、“アトゥム神”が読み取った答えは“NO”。これに対し、テレンスは答えが“両方の拳”であることを悟り、反射的に「もしかしてオラオラですかーッ!?」と叫んでしまった。
そして、読み通り、最後は承太郎のスタンド・“スター・プラチナ”が両拳で繰り出す「オラオララッシュ」を全身に叩き込まれ、再起不能に……。
登場当初こそ、能力を活用した凄腕の“勝負師”としての余裕を保っていたが、ゲームバトルでも精神面でも、承太郎たちによって真っ向から押し負けてしまう形となった。
“心を読む”という能力を逆手に取られ、最後はどこかギャグテイストな散り際を見せてしまったキャラクターである。
作品の主人公たちがその実力で敵を圧倒していくさまは読者や視聴者を熱くさせるが、その活躍の影には“名やられ役”として散っていった敵キャラたちがいたことも忘れてはならない。彼らが散り際に放った“名セリフ”の数々が、より一層、敵側としての絶望感を強調してくれる。