『北斗の拳』ラオウに『ONE PIECE』白ひげ…壮絶すぎる「立ち往生」で最期を迎えたキャラ3選の画像
ゼノンコミックスDX『北斗の拳【究極版】』10巻(徳間書店)

 バトル漫画では、主要キャラクターの死というものはとても重要な場面だ。どのような戦いが繰り広げられ、どのような背景や想いがあって、どのような最期を迎えるのか。いろいろな要素が組み合わさって読者の思い入れも深まっている中で訪れる主要キャラクターの最期の瞬間は、作品にとっては最高のクライマックスでもある。

 そんな中でも特に印象的な最期の迎え方、それが「立ち往生」だ。この言葉は、武蔵坊弁慶が主君である源義経を守るために無数の弓矢を全身で受けて立ったまま絶命したと言われる、いわゆる「弁慶の立ち往生」の逸話に由来するもの。ここからも分かるように、何かを守るために発揮される武人としての誇りや、肉体の限界を超えて生命を燃やしきる執念といったものが、読者の心を熱くするのだ。

 そこで今回は、熱すぎる壮絶な「立ち往生」によって命を落としたバトル漫画のキャラを紹介していきたい。

 

※以下には、コミック『北斗の拳』『鬼滅の刃』『ONE PIECE』の一部内容が含まれています。ストーリーを解説するのが本記事の主目的ではありませんが、気になる方はご注意ください。

■わが生涯に一片の悔いなし!!『北斗の拳』ラオウ

 原作:武論尊氏、作画:原哲夫氏による『北斗の拳』(集英社)には、壮絶な死を迎えるキャラクターが数多く登場する。その中でも、ケンシロウの兄であり最大のライバルでもあったラオウの死もまた、強く印象に残るものだった。お互いに北斗神拳の究極奥義「無想転生」を身に付け、力も互角という状況。だがケンシロウは、多くの人間の想いを背負うことによって全身全霊を尽くし、ラオウに致命傷となる一撃を叩き込んだ。

 この一撃に敗北を認めたラオウは、ケンシロウに近寄ると「見せてくれ このラオウを倒した男の顔を」と語りかける。それまでの激しい戦いが嘘のように「見事だ弟よ!!」と笑みをたたえるその姿は、まるで菩薩のようであった。そして、天高く拳を突き上げたラオウは「わが生涯に一片の悔いなし!!」と最期の言葉を口にして立ったまま力尽きたのだった。これが漫画史に残る名シーンのひとつだということに異論はないだろう。

 ラオウの最期のシーンのすごさは、なんと言ってもその神々しさだ。死の直後には、雲間から光が漏れてラオウを照らしており、まるで神話の一場面を描いた絵画のような荘厳な雰囲気が漂っている。世紀末の乱世に自らの役目を終えたラオウという絶対的な強者が、その肉体から解脱し純粋な魂だけを残し伝説へと昇華された、まさにその瞬間なのだ。

 もしケンシロウがいなかったとしたら、ラオウが北斗神拳の伝承者となり世界を変えていたかもしれない。そんな姿も見てみたい気がするほど、主人公であるケンシロウと匹敵する魅力的なキャラクターであったラオウ。それにふさわしい最期であったと言えるだろう。

■作中で最強の剣士!『鬼滅の刃』継国縁壱

 吾峠呼世晴氏による『鬼滅の刃』(集英社)は、漫画史上最速で発行部数1億5000万部を突破した、言わずとしれた大ヒット作品だ。鬼の首魁である鬼舞辻無惨を倒すため、主人公である竈門炭治郎をはじめ多くの鬼殺隊の隊士が過酷な修練を積み己の技を鍛え上げて鬼退治に挑む姿はもちろん、多種多様な剣士や鬼が登場するのが見どころのひとつだ。特に「柱」と呼ばれる9人の剣士の強さは別格で、無惨は自らの脅威となる柱を真っ先に排除しなくてはならないと考えていた。

 鬼と隊士との間で熾烈な戦いが次々に展開される中で、ただ1人それらと一線を画すほどの強さを持つキャラクターが存在する。それが継国縁壱だ。縁壱は上弦の鬼の黒死牟の双子の弟で、かつては鬼殺隊士として無惨と対峙して完全勝利まであと一歩のところまで迫った剣士だった。しかも鬼殺隊が使用する全集中の呼吸法を使用した剣術の開祖でもある。

 縁壱の強さは、他のどのキャラクターと比べても異次元のものだ。圧倒的すぎて、ラスボスである無惨ですら「本当の化け物はあの男だ」と称したほど。しかし、そんなチートとしか言いようがない強さを持つ縁壱にも、人間である以上は平等に最期の時はやってくる。それが兄である黒死牟との戦いで、80歳を過ぎてからの実戦であった。

「さすがにこの年齢では鬼に勝つのは無理だろう……」と思えたが、神がかった剣技は老いても健在で、あっという間に黒死牟を追い詰めてしまった。これには弟への劣等感から鬼にまでなってしまった黒死牟にも思わず同情してしまう。しかし、縁壱はあと一撃というところで寿命が尽き、立ったまま……。

 無惨や黒死牟という最強クラスの鬼をも赤子扱いする縁壱だが、その死に様もまた作中ではひときわ異彩を放っており、そんなところにもカリスマ性を感じてしまう。

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