■「ボッジを見るかのように成長を応援したくなる」
オーディションを経て決まった、ボッジ役の日向未南は喋ることのできないキャラクター。しかし、その「言葉」や「想い」の一つひとつに魂を吹き込んだ日向の芝居は、心に深く残るものとなっている。
「ボッジ役のオーディションは最初に30人近くの方が参加してくださり、一日に数人ずつ聞いて決めていきました。日向さんは、テープオーディションを経て、次の現場オーディションでも一生懸命に役に向き合おうとされていて、ボッジっぽいなと思ったんです。この方だったら、2クール分を乗り越えて、成長してくださるんではないか、という雰囲気を感じたんです。そこで監督の八田(洋介)さんと音響監督のえびな(やすのり)さん含めて相談し、日向さんにオファーすることを決めました。日向さんはアフレコ以外のところでもいろんなことを吸収されていましたね。本作では中堅、ベテランのキャストさんが多い中、必死に学んでいらっしゃって、自分の出番がなくなっても現場を見学していたり、ダビングに立ち会ったりして、彼女の必死な想いが伝わってきましたね。実際、前作全23話を通して、日向さんの成長も窺える作品になっていると思います。やはり、私としても日向さんのような声優さんの成長を見られるのは嬉しいですし、まるでボッジを見るかのように応援したくなるんです。今年声優アワードの新人声優賞を取られて、本人にも『おめでとう!』と伝えましたね」
日向演じるボッジの声は、思わず耳をそばだてて聞いてしまう、求心力と美しさがある。
「本当に独自の声の魅力をお持ちですよね。それでいうと、たとえば本作にも出演している梶裕貴さんってたくさんの仕事を抱えてらっしゃる方ですが、『この場面はどういう気持ちで話をしているんですか』など、音響スタッフに質問されたりするんです。普段、音響監督から演出したりすることが多い中、その役のことを知りたい、わかりたいという気持ちが強いんですよね。日向さん、村瀬さんだけでなく、そういう方々が、フィルムとしての作品を上に上げてくださると思うんです。なので、そうした現場のディスカッションは嬉しいし、楽しいですよね」
多くの苦労はあれど、この作品作りの核には「もの作りの醍醐味」が満ち溢れているように感じられた。岡田プロデューサーご自身は、制作現場でどんな瞬間に「もの作り」の喜びを感じるのか。最後にそれを語ってくれた。
「私たちのアニメ制作という仕事は、限られた時間の中でやらなければいけないものなので、やりたいけれどできないこともあるんです。その中で、声優さん、スタッフさんたちの『やります!』『できます!』という声や思いは、非常に励みになりますし、それこそが作品をいいものにしてくださると思っています。そういう瞬間に立ち会えるときはとても充実した気持ちになりますね。また、その作品が出来上がって、皆さんに観ていただくタイミングもこの仕事における、大きな喜びの瞬間ですね」
〈プロフィール〉
岡田麻衣子 おかだ まいこ
WIT STUDIO所属のプロデューサー。シンエイ動画でプロデューサーとして活躍した後、WIT STUDIOに移籍。数々のアニメーション作品の制作を手掛ける。プロデュース作品に映画『STAND BY MEドラえもん』(14年)、『Hello WeGo!』(19年)、テレビアニメに『恋は雨上がりのように』(18年)、『GREAT PRETENDER』(19年)、『王様ランキング』(21年)など多数。