■漫画家の徹夜を美談にはさせない!「水木しげる」の睡眠時間

 最後に『ゲゲゲの鬼太郎』の作者で知られる、水木しげる氏の睡眠時間について紹介しよう。

 すでに紹介した尾田氏・鳥山氏とは逆に、水木氏は忙しいなかでも10時間は寝るということを、『水木しげる漫画大全集』に収録されている『睡眠のチカラ』で明かしている。

 出版社のパーティ会場で睡眠について語ったシーンで、「眠っている時間分だけ長生きするんです 幸せなんかも“睡眠力”から湧いてくる “睡眠力”こそがすべての源ですッ!!」と力説しているのだ。

 確かに、不眠で仕事をするよりも、睡眠時間をしっかりと確保した時のほうが効率よく働けるような気もする。しかし驚くべきは、漫画家としてそれだけの睡眠時間を確保できている水木氏の作画スピードではないだろうか。

 漫画家のなかには、寝たくても徹夜せざるを得ない……という人もいるだろう。アシスタントをつけてもそれだけの睡眠時間を確保するのは至難の業のはずだが、それを可能にしていた水木氏の作画スピードには脱帽である。

 生涯現役を貫いた日本が誇るレジェンド漫画家の水木氏。93歳という長寿の秘訣として、睡眠時間に妥協することなかったその姿勢も、幾ばくかの影響を与えていたのかもしれない。

 

 漫画家によってどれだけの睡眠を確保できているかはそれぞれだが、誰しもが少なからずその身を削って自身の作品に情熱を注いでいるのは明らかである。

 漫画文化の歴史を刻む漫画家たち。その歴史を語り継いでいくのは、我々読者である。すべての漫画家への経緯を忘れず、星の数ほどある物語をこれからも楽しませていただきたいと思う。

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