■いくつもの属性や設定は美少女戦士たちにも共通?

 本作では五勇士のうち4人は戦国武将の末裔で、心の力、それを根本真理とする鎧や武器、さらに通り名などさまざまな属性や設定が存在する。

 例えば、本作の主人公・真田遼は真田忍軍の子孫であり、やさしい彼は「仁」の心を有する鎧擬亜「烈火(=火)」の持ち主のため、通り名は「烈火のリョウ(烈火)」。「双炎斬」など炎に関する武器や技を使用し「赤」色を担当し、出身地も真田家にゆかりある山梨県。

 豊臣家の子孫である「天空のトウマ」こと羽柴当麻は「智」を持つ藍色の鎧「天空」を武装し、大気(空)のエネルギーを利用した武器や技を操った。こうした属性やイメージシンボルなどの存在は、後に生まれた『美少女戦士セーラームーン』などを想起させる。

 他メンバーも、「光輪のセイジ」こと伊達征士は伊達政宗の子孫、「水滸のシン」こと毛利伸は毛利元就の末裔と続くなか、「金剛のシュウ」である秀 麗黄(シュウ・レイ・ファン)の先祖は隋の時代に日本に来た武術家で(シリーズが進むにつれ設定に変更があり)、実家も横浜中華街で暮らす華僑という意外なヒネりがあった。

 また、鎧擬亜は全部で9つあり、残りは敵側の四魔将が所持する。この鎧をめぐっての戦いや仲間探しが物語の軸となるのだが、闇魔将アヌビスがセイジ、毒魔将ナアザがシンというように、それぞれライバル関係にも似た「因縁」も魅力的だった。

 なかでも四魔将のひとり・鬼魔将シュテンは「忠」の戦士でありながら阿羅醐軍へ……つまり“闇堕ち”していたが、覚醒した後に味方となる流れは今の『プリキュアシリーズ』にも通じるものがあるのではないだろうか。

■独特なセリフまわしや演出「二重放送事故」などの珍事

 大胆な和風デザインを施したバトルスーツに加え、セリフや演出などさまざまな部分で斬新な作品だった。番組キャッチコピーである「俺の心に鎧が走る!」をはじめ、緊迫した場面でもポンポンと迷言や珍演出が飛び出していたのも特徴だろう。

 たとえば光輪のセイジはクールな美少年だが、彼は腕組みをしたまま頭から落ちるというものすごいインパクトで初登場し、その後も「センチだな」と当時の年配者も使わないセリフを吐いたり、未成年で車を運転するなどツッコミどころが満載のキャラだった。

 その上をいくのが妖邪界の女戦士・迦遊羅(かゆら)だが、彼女も初登場からインパクト大で、いきなり「私の名は迦遊羅」と自身の名前を“4回”も連呼した挙げ句に「ホーホホホホホッ!」と物凄い高笑いを披露している。

 とはいえ、本作でもっともファンを驚かせたのが第17話の「二重放映事件」であろう。この事件は現在のように制作サイドが間に合わず、苦肉の策で同じ話数を二週に渡って放映するといったものではなく、テレビ局側のミスによるものだった。

 翌週には謝罪フリップとともにお詫びアナウンスが流されるも、全40話予定からさらに1本短縮され全39話になるなど、まさに同作随一の「珍事」であった。

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