■地上に降り立った赤い彗星のプレッシャー「シャア・アズナブル」

 続いては第34話「宿命の出会い」より、アムロがサイド6にてシャアと直接対峙したシーンを紹介しよう。 

 まともな修理を受けられないままサイド6からの出航を迫られるホワイトベース。そのわずかな時間を利用してアムロは、父親のテム・レイに会うために雨の中バギーを走らせる。しかしテム・レイは酸素欠乏症によって変わり果ててしまい、尊敬していた父とはかけ離れた姿になっていた。

 涙を流し父親と決別したアムロだったが、ホワイトベースに戻る道中、バギーがぬかるみにハマってしまう。そこへ一台の車が偶然通りかかり、アムロは助けを乞うために声をかける。その車から降りてきたのが、因縁の相手シャアであったのである。

 真っ赤なスーツ姿の男を見たアムロは、言葉を交わすことなくその人物がシャアであると気づく。「君は?」というシャアの問いに、「ア、アムロ...。アムロ・レイです!」と返答。手際よく牽引の準備をするシャアを見つめ、同じく名前を問うアムロ。ここでのやり取りがあったからこそ、のちに戦場で名前を呼び合いながら死闘を繰り広げる2人の、数々の名シーンが生まれたと言えよう。

 ついに対峙した因縁の相手に、終止動揺しっぱなしであったアムロ。もちろんシャアと対面したら、誰もがその真っ赤なスーツと、明らかにただ者ではない空気感に気押されてしまうことだろう。そんなシャアと、のちに舌戦を繰り広げるアムロの成長ぶりにも、ファンとしては関心を示したいところである。

 ちなみにこの時アムロは、「初めて会った人なのに、なぜシャアだってわかったんだ?」と自分の直感に疑問を抱くのだが、アムロのニュータイプとしての片鱗が垣間見える、極めて重要な回であったことにも気づくことができる。

 

 戦場以外でアムロが偶然出会った2人の大物。当時のアムロと対比するとランバ・ラルとシャアがいかにアムロにとって高くそびえる存在であったかを思い知らされる。しかしその瞬間があったからこそ、のちのアムロの成長に感動を覚えることができるのだ。アムロの成長を語る時には、この2つの名シーンとともに語り継いでいきたいところだ。

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