アムロ・レイが駆るガンダムは、ジオン公国軍から“連邦の白い悪魔”と恐れられ、一年戦争の戦場を無双してきた。そんなアムロも実際に対面した敵の大物パイロットの前では、まだ幼い少年に過ぎなかった。しかし、彼らとの出会いをきっかけにアムロが人間として成長していったのは明らかである。
今回は、アムロがモビルスーツを降りた生身の状態で出会った2人の大物について、成長途上だったアムロとの対比を交えながら振り返っていきたい。
■酒場で出会った大きすぎる敵軍の星「ランバ・ラル」
まずは第19話『ランバ・ラル特攻!』より、ホワイトベースから脱走中のアムロがソドンの町にある酒場で偶然出会った、ランバ・ラルについて紹介しよう。
アムロが酒場で一人食事をしていると、クランプを筆頭にドヤドヤと13人のジオン兵たちが入店してくる。ランバ・ラルの内縁の妻であるクラウレ・ハモンと目が合うと、最後に部下に見張りを任せて入店してきたのがランバ・ラルだった。
「みんな座れ座れ! 作戦前の最後の食事だ!」と部下たちに景気よく食事を勧めるランバ・ラル。続いて、ハモンがアムロの分も含めた食事を注文する。2人の元に歩み寄ったアムロは、他のジオン兵に煽られながらも食事を丁重に断った。
そんなアムロを気に入ったランバ・ラルは、アムロの肩に手を乗せながら「わしからも奢らせてもらうよ」とすっかりアムロを気に入った様子。ところが、アムロを探しに来ていたフラウ・ボゥがジオン兵に捕らえられてやって来たことをきっかけに、アムロも連邦軍の関係者であることが悟られてしまう。
身構えるアムロに近寄り「良い目をしているな」とアムロのケープを剥がすランバ・ラル。そこに隠されていた銃を見て、「それにしてもいい度胸だ。ますます気に入ったよ」と少しもひるむことなくアムロに一層の関心を見せるのだ。銃ごときでは動じない「青い巨星」の異名を持つ歴戦の猛者としての所以が、この余裕からうかがえる。
「戦場であったらこうはいかんぞ。頑張れよアムロ君」と言い残し席に着くランバ・ラルに、「は、はい...。ラ、ランバ・ラルさんも、ハモンさんも。ありがとうございました……」と礼を言い、足早に酒場をあとにするアムロ。
まだパイロットとしても人間としても未熟なアムロと、威風堂々とした戦士であるランバ・ラルとの対比が印象的だったシーンだ。
ランバ・ラルとハモンのことを回想しながら「あの人たちが、僕らの戦ってる相手なんだろうか……」とぼんやり考えるアムロ。この出会いをきっかけに、戦争を単なる国家間の争いとしてではなく、戦場にいる人間単位で広く物事を考えられるようになっていく。大物のオーラを間近に感じて成長するきっかけとなった、ついつい見入ってしまう名シーンである。