■『ドラゴンボール』サイバイマンVSヤムチャ
予想を裏切ったバトルという意味では『ドラゴンボール』(鳥山明氏/集英社)でのサイバイマンとヤムチャの戦いもそうだろう。ナッパとベジータが地球を征服するためにやってきた際に、ナッパが地面の中に種を植えて水を掛けると、そこからサイバイマンが生まれた。それを見たヤムチャが「オレにやらせてくれ ここらでおあそびはいいかげんにしろってとこをみせてやりたい」と名乗りを上げ、クリリンたちもヤムチャに任せてサイバイマンとの戦いを見守ることになる。
サイバイマンの戦闘力はラディッツと同じなので、それほど弱くはない。しかし、ヤムチャたちはベジータたちが地球にやってくる間に修行をしていたので、それぞれがラディッツを上回る戦闘力を身につけていた。
そこから考えてもサイバイマン相手なら、ヤムチャが戦っても余裕で勝てると思われた。そして、実際にサイバイマンから攻撃を受けることなく、かめはめ波で勝利を収めたかのように見えたが……ここでなんとサイバイマンはヤムチャに抱きつきまさかの自爆、相打ちとなってしまったのだ。
読者の予想を裏切るまさかの死。しかもベジータからは「おい! きたないからかたづけておけよ そのボロクズを!」と言われてしまう始末。また、このときの倒れたヤムチャのポーズも、ネタとして扱われるようになってしまった。
後の人造人間との戦いでも同じような展開だったためにヤムチャには“噛ませ犬”のイメージがついてしまったのが、実力はあるだけになんとも気の毒だ。
強い者が当たり前のように勝つというばかりがバトル漫画ではない。格下でもやりようによっては、格上を下すこともあるのだ。知略や戦略を駆使して、単純な戦力比較では負けている相手に対して一矢を報いる、それがバトル漫画の見どころのひとつでもある。これからもバトル漫画でそんな熱い戦いが展開されることに期待したい。