■お坊ちゃんかと思いきや、誰よりもミライを想った男
『機動戦士ガンダム』に登場したカムラン・ブルームも一途な男で、大人になってから改めて見るとつい感情移入してしまうキャラだ。
第３３話「コンスコン強襲」から登場したカムランは、ホワイトベース隊のクルーであるミライ・ヤシマのかつての婚約者。中立コロニーであるサイド６の監察官だが、背広を着たいかにも弱々しい風貌だった。
ミライも久々の再会に笑顔を見せるものの、そこまで最前線で戦ってきた彼女と官僚の彼では価値観が完全にズレており、アムロたちの過酷な戦いを見てきた視聴者からしても「ずいぶん世間知らずなキャラだな」と思わされる登場だった。
そして名家の出であり、何かと父の力を頼るようなセリフも。消息を立ったミライについても「必死に探させた、いくら費用がかかったか知れないぐらいだ」という説明。彼の立場からすると最善の手段だったのかもしれないが、彼の「戦争は対岸の火事」とでも言うような姿勢にミライは冷めてしまう。
このときのミライはブライト、そしてスレッガーからも好意を寄せられており、そこに登場してきたカムランの恋は誰が見ても絶望的。それでもカムランの彼女への想いだけは変わらず、ジオン公国軍が包囲する中、ミライたちが安全にサイド６から出航できるように自ら水先案内人をかって出たのだ。
軍人でもない民間人の彼が、自分をフッた女性のために命を懸けるとは。涙を流しながらミライの無事を祈るしかない、気は弱いが誠実で男らしい行動だった。
彼はその後、劇場用作品『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』で、ロンデニオンの会計監査局員として再登場する。このときカムランは、ネオ・ジオンがアクシズを地球に落とそうとする計画に気がつき、終身刑も覚悟のうえでロンド・ベルに協力。ミライの夫となったブライト艦長に、横流しした核弾頭１５発を託したのだ。それもこれもミライに生きていてほしいから。
テレビ版３３話ラストで、ミライに「戦争から逃げすぎて変わらなすぎているのよ」と指摘され、そのときカムランは「君を愛しているという気持ちは変えようがないじゃないか」と返している。サイド６でミライと別れて十数年の間に、彼の中でも大きな変化があったのだろう。最初こそ、ナヨナヨとした場違いな男のように見えたカムランだが、最後は多くの視聴者にも熱い男として映ったのではないだろうか。
以上、歴代ガンダム作品から、印象が変わっていったキャラを紹介していった。振り返ってみると『ガンダム』シリーズは人物描写が細かく、大抵のキャラには良い一面が用意されている。思い出の中では嫌な奴だったあのキャラも、もう一度本編を見返してみると、実はいいやつかも？
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