1979年から放送された『機動戦士ガンダム』以降、現在も最新作『機動戦士ガンダム 水星の魔女』が放送中の、幅広い層から人気を集め続けるガンダムシリーズ。歴代のシリーズの中には最初は「いやなやつ」として描かれていたものの、物語が進むにつれて実は心優しい「いい人」のように見え方が変わっていくキャラクターもいる。
最近では『水星の魔女』のグエル・ジェタークがその代表例だろう。グエルは、アスティカシア高等専門学園のパイロット科3年生で、ベネリットグループの御三家であるジェターク家の御曹司。物語初期は学園の優秀な生徒として、横暴な態度をとる「いやなやつ」だった。だが主人公・スレッタとの決闘に敗れてからは、自分の非礼を詫びて素直に頭を下げたり、決闘でのフェアプレーを重んじる姿勢を見せたりと意外な誠実さを見せる。ところどころかわいらしい行動もあったりと、物語が進むにつれ印象をガラリと変えていったキャラだ。
結局、第1期は決闘では良いところはなく、最終話で悲惨な結末を辿るグエル。だが最初のイメージを大きく覆し、彼は登場するたびに自身の好感度を上げていき、何かアクションを起こすたびにツイッターでトレンド入りするほどに視聴者の心を掴んでいった。
4月9日から放送がスタートした第2期においては第14話時点では登場シーンはなく、OP映像で不穏な表情を見せているのみ。彼の今後を一番注目しているというファンも多いのではないだろうか。
■スペシャルで模擬戦で不死身な男、パトリック・コーラサワー
このように「かませ犬」だったり「いやなやつ」が後々イメージを変えていくというケースは珍しくない。『機動戦士ガンダム00』に登場するパトリック・コーラサワーもそうしたキャラの一人だろう。
彼は、物語冒頭でAEUの新型MS・AEUイナクトのテストパイロットに抜擢され、公開演習に臨む。だが突如武力介入してきた主人公、刹那・F・セイエイのガンダムエクシアにコテンパンにされるのだ。
短い描写ではあるが、「俺はスペシャルで、2000回で、模擬戦なんだよぉ!」といったセリフで、視聴者に自信過剰でプライドの高いエリートの印象を与えたコーラサワー。その後の三国合同演習でも彼女と遊んで遅刻するという軽率な態度だったが、このとき彼を𠮟責したカティ・マネキンにコーラサワーは一目惚れしてしまう。
これ以降、コーラサワーの印象は180度変わっていく。GN-Xのパイロットになってからは、ガンダムデュナメスに大ダメージを与えたり、ガンダムナドレと相打ちとなったりと、確かにスペシャルな戦果を挙げた。
また、2ndシーズンの最終決戦では愛するカティの乗る艦を命がけで守り撃墜。だが「なぜか死なない」というのが彼のすごいところで、このときも死亡したかに見えたがギリギリで脱出。最終的には見事カティと結ばれるという、シリーズでも珍しく幸せなルートを辿る愛されキャラとなった。
初登場時の傲慢なかませ犬が、ここまでの大出世を遂げるとは驚きだが、1話のエクシア戦を見返してみるときっちりエクシアの攻撃自体には反応し、的確に対応している。機体の性能差がありすぎてあっさり負けてしまったが「スペシャル」を自称するだけの実力は最初からあったのだろう。